「夫の気が利かない」は濡れ衣だ

「夫の気が利かない」本当の理由

――妻のことを守ろうとする男性の習性が、むしろ相手を傷つけてしまう。ちょっと悲しいですね……。

【黒川】　さらに言えば、「私の夫は気が利かない」と思う妻も多いかもしれませんが、それは濡れ衣です。

夫が自分の服を洗濯機に入れる際、脱ぎ捨ててある娘の服に気づいて一緒に回収する――夫がそれをしないのを、妻は「家事への参加意識ゼロ」とみなしてイライラしてしまう。

そのような“ついで家事”を苦手とする男性が多いのは、2つの理由があります。

1つは男性の脳が、「洗濯機に自分の服を入れる」と決めたら、その目的に一直線になってしまうから。

狩りをするとき、いったん目標を決めたら、足元の苺に気をとられるわけにはいかないため、目標物しか見えないようになってしまうわけ。これをゴール指向と言います。

2つ目は、所作の違いです。男性は鎖骨を縦に回転させ、女性は横にスライドさせることを優先します。

このため、所作が違います。レストランで観察していても、ウェイターがテーブルに正対して最短距離で物をつかむのに対し、ウェイトレスは横向きに近づいて流れるように接客するのが主流です。

鋭角的に動く男性からしたら、女性の仕草は認知しにくい。だから妻がいま何をしているかを認知しておらず、どう手を添えてほしいかもわからない。

責任感がないからやらないのではなく、本当にわからないのです。夫に「以心伝心の気づき」をいきなり求めるのは酷な話でしょう。

――ありがたいお話です。男性読者はほっとしているかもしれません（笑）。そのうえで、夫婦円満のための秘訣を教えてください。

【黒川】　妻は、男性が身の回りの変化に気づくためには女性の数倍ストレスがかかることをまずは認識すべきでしょう。

あと、夫にはなるべく具体的な指示を出すこと。男性の多くは問題解決型なので、してほしいことがあればシンプルに目的を伝えるほうがスムーズに事が進みます。

――「察してほしい」と期待するよりも、ちゃんと言葉で伝える。

【黒川】　そうです。一方で夫は、自分たちは女性よりもはるかに周りのことに気が付いていないことを頭に入れておくこと。そして、妻への感謝の気持ちを言葉で表現してください。

妻から「あなたは気が利かない」と言われたら、「気が利かなくてごめんね。いつもありがとう」と言えばいいんです。男女による認識の違いを夫婦双方が意識するだけでも、コミュニケーションはしやすくなるでしょう。