2019年12月10日 公開
10月1日に訪れたときは、「市街戦」と形容してもいいほどの激しい衝突が起き、警察隊は若者の心臓に向けての実弾発射に躊躇しなくなっていた。
そのころすでに警察の暴力はデモ隊だけでなく、デモに同情的なメディア、ボランティア医療隊、店舗、一般市民にまで、ますます容赦なくなっていた。
たとえば、私の友人のセルフメディアの若者二人は10月1日の朝、突然逮捕された。セルフメディアというのは、香港メディアが親中派ばかりで信用できないという市民のために、カメラを手に独自で情報をとってSNSや動画サイトなどで発信する、一種の市民記者たちだ。実際彼らの活躍は、香港社会ではそれなりに肯定されてきた。
「香港同人」というセルフメディアグループとは2014年の雨傘運動取材以来の付き合いで、この香港デモ取材でも、いろいろ協力してくれている。彼らが逮捕された理由とは、取材中に首にぶら下げている自作のプレスカードを「私文書偽造」とする信じがたいものだった。
翌日に一応釈放されたが、これは香港デモ取材者全体への恫喝だ。警察はデモ取材中のメディアにゴム弾や催涙弾をあえて撃ってくることが多く、実際に9月29日にはインドネシア記者が顔にゴム弾を受けて眼球破裂の重傷を負った。
また、医療ボランティアへの暴行もひどかった。医療ボランティアとは、非番の医師や看護師、救急隊員や救急医療の心得がある人たちが、自前の医療器具や医薬品をもってデモの負傷者に対して救護活動を行なうボランティアだ。
彼らはSNSでネットワークをつくり、助けを求められれば、けが人がデモ隊であっても警官であってもマフィアであっても救護する、という赤十字精神を遵守している。
だが、警官はそういう医療ボランティアをあえて痛めつける。知り合いの医療ボランティアの青年は、負傷者救護中に警官から背中や頭を殴る蹴るなどされた、と証言する。
また、デモ隊の負傷者を治療したボランティア医療隊員を「地下医師」として摘発、逮捕したケースも相次いだ。8月11日、デモの負傷者を救護するボランティア医療隊の女性がゴム弾で顔を撃たれて右目を失ったこともあった。
更新:11月25日 00:05