2019年10月03日 公開
2023年02月01日 更新
「EUに毎週3億5000万ポンド(約480億円)の拠出金を支払う必要がなくなる」
国民投票の選挙中でのこのような発言が元で、今年5月、ジョンソン氏はロンドンのウエストミンスター裁判所から出廷を命じられた。公職にあることを利用して故意に虚偽の主張をするという犯罪行為を繰り返し、下院議員の義務を果たさなかった疑いがあるとされたのだ。
ジョンソン氏の弁護団は、私人訴追制度による今回の告発は「政治的動機に基づくもの」で、コモン・ロー(慣習法)において前例がないと主張した。高等裁判所にあたる刑事法院はこの主張を認めて、出廷命令を無効とする判断を下した。
だが、3億5000万ポンドという金額は英国によるEUへの拠出金総額を示しており、そこからEUからの払戻金やEU予算から英国の公共部門への支払いなどを差し引くと、実際に英国がEUに負担している額はずっと小さくなる。
ジョンソン氏が国民投票で離脱を扇情的に煽る大衆迎合的キャンペーンを繰り広げたことは間違いないだろう。
EU関係者の多くは、ジョンソン首相がEUの取り組みをドイツ第三帝国になぞらえたことを許さない。
2016年の離脱キャンペーンの最中、ジョンソン氏は欧州を統一しようとする試みが歴史上、何度も繰り返されてきたことに言及し、「ナポレオンやヒトラーなど、様々な人物が試みたが、悲劇的な結末を迎えてきた」としたうえで、「EUはこれを別のやり方で試しているだけだ」と述べた。
フランスの高官や外交官の間では、このような正確さを欠いた言葉遣いや冷やかし半分のユーモア表現に対し、批判が集まった。
パリ政治学院のザキ・ライディ教授は、「ジョンソン首相の人格に大きな不信感を持っている」と指摘する。
「全く予測できないという意味では、すぐ隣にトランプ米大統領がいるようなものだ。ただ、トランプ氏と違うのは、ジョンソン首相が何を考え、どんな信念を持っているのか分からないところだ」。
「合意なき離脱」も辞さない姿勢でEUとの交渉に臨んでいるジョンソン首相だが、世界経済の混乱を避ける意味でも、「秩序ある離脱」への道筋を示す責務があろう。イギリスにおける日系企業の活動にも支障が出かねない状況になることを案じている。
更新:10月09日 00:05