2019年09月13日 公開
写真:遠藤宏
6月末の大阪G20には多くの首脳陣が集った。各国に気を配るG20を運営するのは容易ではない。それを完璧に運営したのは、わが国外務省の無名の働き手だった。内閣官房参与の谷口智彦氏が、大阪G20で世界に示した日本外交の底力を振り返る。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年9月号)、谷口智彦氏の「G20成功の舞台裏」より一部抜粋・編集したものです。
会期中の各国報道は、米中二国の首脳会談ばかりに焦点を集めるものだった。直後にトランプ大統領は板門店を訪れ、北朝鮮の指導者・金正恩氏と電撃的な会談を果たした。
G20にどんな成果があったか吟味するいとますらなく、かくして国際情勢に変化は止まない。
本稿執筆時点で、参議院選挙を安倍政権は無難に乗り切ったことが明らかだが、この先は、日米貿易交渉などで政権にとって予断を許さない局面が続く。
それゆえにこそ、本稿は関心をあえて絞り、G20だけを論じておくことにした。締めくくる前に、触れておきたいことがもうあと2点ある。
その第1は、毎度のこととはいえ、規模において類例のない今回、一層天下に轟かせたわが国の会議運営能力である。
大阪南港のフェリー・ターミナルには、海上保安庁の船に加え、広島県警が送った警備艇の姿を認めた。各地から来た警察官は夥しい数に上ったが、少しも威圧的なところを感じさせなかったのは出色だった。
外務省はいわゆる「ロジ」の達人たちを遠くニューヨークからまで集め、万全を期した。
何十人という要人に個別に付く者、エリアの動線、重要施設における首脳の動きを見る者が無線で連絡を取り遅滞なきを期す様子は、水際立っていた。
テレビに映ったそんな1人が、いかにも溌剌と、頬を紅潮させていたのが印象深い。
おかげで会議はウラジーミル・プーチン・ロシア大統領やトランプ氏の大遅刻すらも易々と包摂し、むしろ予定より早めに進んだ。
各国外交官はさぞや舌を巻いただろう。わが国外務省の無名の働き手たちは、またしても、日本外交の底力を世界の同業者に見せつけた。
もう1つ、大阪城天守閣をバックに集合写真を撮った時、わずかにそのときだけ、雨が止んだ。用意していた雨天用の撮影場所は使わずに済んだ。
全日程が終わった直後、総理秘書官の1人がいったものである。「安倍総理は『晴れ男』とはいうけれど、今回ばかりは奇跡かと思うレベル」だったと。
更新:11月22日 00:05