2019年08月05日 公開
2022年07月08日 更新
※画像はイメージです。
日韓慰安婦問題、元徴用工訴訟、そして輸出管理の問題をめぐって亀裂を深める日韓関係――。日本政府は安全保障の観点から、韓国の「ホワイト国」除外を決めた。気鋭の政治アナリストでパシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏は、安倍政権の決定を支持しながらも、世論戦での“手痛い悪手”を指摘。日本が真にとるべき道を提言する。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年9月号)、渡瀬裕哉氏の「国際世論戦を想定せよ」より一部抜粋・編集したものです。
7月1日、日本政府は韓国に対する輸出管理運用に関する優遇措置を見直すアナウンスを行なった。
その後、同措置に関する多くの論評記事がメディアを賑わせているが、すでに日本政府は韓国政府による国際的な世論戦を仕掛けられ、その立場が不利になりつつあるとの認識があまりにもなされていない。
過去の過ちを再び繰り返すことなく、適切な振る舞いを行なっていくことの必要性を強く認識するべきだ。
日本政府は韓国向けの輸出管理運用見直しの大義名分として、韓国側の安全保障上の輸出管理の不備を主張している。ところが、それと矛盾する報道がメディアでは散見される。
昨今のメディア報道では、日韓関係の外交関係悪化に対する報復こそが日本政府の本音であるとされているものも多い。
たとえば、象徴的な事例として、前記のアナウンスの翌日、7月2日の『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は「トランプ化する日本外交」という論評を掲載した。
本論評は、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退と絡めて、韓国向けの同見直し措置がトランプ外交の影響を受けた日本の独善的な外交姿勢の表れだとする内容だ。
その後も国内外のメディアで、当該事案に関する論評記事が多数掲載されているが、日本政府の意図について徴用工をめぐる問題等と絡めた形で、その主張が歪められる報道が相次いでいる。
こうした状況は、日本側が世論戦を進める上で最悪の状況だといっていい。なぜなら、そのような日本政府が韓国に対して歴史戦をめぐる経済報復を行なっているという言説は「韓国政府の主張」そのものだからである。
その結果として、日本政府は正当性を欠く輸出管理運用の見直しによって、韓国に対して嫌がらせを行なっているというイメージが国際的に形成されつつある。まさに韓国政府の思うつぼである。
更新:11月21日 00:05