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混迷の日韓関係、日本政府が行なった“手痛い悪手”

2019年08月05日 公開
2022年07月08日 更新

渡瀬裕哉(パシフィック・アライアンス総研所長)

再び手痛い敗北を招きかねない

日本側の主張は、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)第21条の「安全保障措置の例外」規定である。筆者も過去に本誌で、同規定を活用し韓国側の防衛産業等に対して圧力をかけることを提案したことがある。

安倍政権が今回のように、国内手続き上の輸出管理運用の優遇措置見直しというシャープな形で首尾良く韓国側に外交圧力をかけたこと自体は高く評価したい。

貿易をめぐる安全保障を大義名分とした制裁行為はトランプ政権も頻繁に利用しており、日本政府の行為はWSJの論評にもあるようにトランプ流の手法に倣ったものといえるだろう。

一方、韓国側の主張は、GATT第1条が求める加盟国を最恵国待遇扱いとする規定や第11条の関税や課徴金によらない輸出入の制限や禁止を根拠とした論理構成となっている。

そして、韓国側の狙いは日本政府の同見直し措置が徴用工などの歴史問題に対する報復措置である旨を強調し、その安全保障上の正当性を揺るがすことにある。

同見直し措置がアナウンスされたあと、日本の保守的な世論の一部では、「日本政府はよくやった」「国際法が守れない国との信頼はない」などの勇ましい声が溢れていたやに記憶している。

だが、それら韓国の歴史戦に結び付けた評論行為は韓国側に有利に働く可能性があるため、われわれ日本国民も日本政府を応援する意味でそのような趣旨での言及は避けるべきだ。

日本政府が韓国に向けた輸出面での優遇措置を安全保障面から見直したことは妥当な行為だ。まして、国内手続き上の優遇措置を取りやめるだけの話なので、そのことについて韓国側にとやかくいわれる問題ではない。

ただし、自国の正しさを自国民が感じることは、必ずしも国際的係争で相手国に勝てることを同時に意味しているわけではない。

日本は過去にも、勝利が確実視されていた韓国による日本の水産物輸入規制に関するWTO(世界貿易機関)での係争において、まさかの逆転敗北を喫している。

正しい日本が韓国のイチャモンに負けるわけがないという慢心を抱くことは、結果として韓国の半導体関連にインパクトを与えるという切り札で、再び手痛い敗北を招くことになりかねない。

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