2019年05月17日 公開
2019年05月17日 更新
<<地域銀行(地銀)は、地域における規模は大きく、プレゼンスは絶大である。しかし、その規模をひたすら拡大させていくことに邁進して、社会から求められている地域での役割を果たし切れているのかという疑問が各地で呈されている。
そんな潮流の中で浮上したスルガ銀行による巨額不正融資問題。『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)』の発刊した金融ジャーナリスト・浪川攻氏がその内実を綴った。>>
※本書は浪川攻著『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)より一部抜粋・編集したものです
広島を訪れたちょうどそのころ、首都圏では、ある事件が勃発していた。
東京・銀座に本社を構える不動産会社、スマートデイズ社の経営危機である。
同社はシェアハウスを建設し、それに投資を募ってサブリース(不動産転貸)方式で賃料を投資者たちに還元するシェアハウスビジネスをしていた。
ところが、同社は2018年1月25日、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の投資家、つまり、シェアハウスオーナーに対する賃料支払いを突然、停止したのだった。
同社は4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したが、同月18日には申請は棄却され、保全管理命令が地裁から出る。そして、5月15日、破産手続きの開始が決定された。
シェアハウスオーナーたちへの賃料支払い停止の直接的な原因は、同社に融資を続けてきた静岡県の地銀、スルガ銀行が融資をストップさせたことにあった。
入居者が支払う家賃に基づいて、サブリース方式でオーナー(投資者)たちに賃料を支払うというのは建前で、実態としては、スルガ銀行からの借入金で賃料の一部を支払うという自転車操業のような資金操作が行なわれていた結果、スルガ銀行からの融資が途絶えると、間もなく、スマートデイズ社は賃料支払い能力を喪失した。
言うなれば、投資したシェアハウスオーナーは、スマートデイズ社の甘言に乗せられたのだが、本当の深刻な問題が露呈するのはこれからだった。
スルガ銀行はスマートデイズ社向け融資のみならず、シェアハウスオーナーたちに対してもその投資資金を融資していたからである。
2018年5月15日、スルガ銀行はその実態を発表した。シェアハウス案件向け融資の総額は2035億8700万円にのぼり、資金借入している債務者数は1258人に達するという内容だった。
更新:12月04日 00:05