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日産ゴーン氏解任で変わる次世代自動車産業

2019年01月15日 公開

田中道昭(立教大学ビジネススクール教授)

「自動車はシェアするもの」という価値観

次世代自動車産業は、米テスラが「クリーンエネルギーのエコシステム構築」をめざしてEV化を促進し、グーグルが「人びとが自分のあるべき姿、本当にやりたいことのためにより有意義に時間を過ごせるようなスマートな社会を実現したい」という使命感で自動運転化の準備を進めてきたことで大きな進展を見せている。

そのなかでウーバーやリフトのようなライドシェア(相乗り)会社が「所有からシェア、そして都市デザインを変革」することを使命としてクルマの在り方を変え、そしてアマゾンがアレクサを武器に「ただ話し掛けるだけの優れたユーザー・インターフェース」である音声認識AI(人工知能)アシスタントをクルマに搭載する流れを不動のものにした。

グーグルをはじめとしたテクノロジー企業が牽引してきた自動運転においては、自動車メーカーが後を追いかける格好になっていたが、2018年1月に米GMが2019年からの完全自動運転実用化を発表。

日本勢もトヨタを中心に2020年東京五輪・パラリンピック開催前の実用化をめざす動きに拍車が掛かっている。

自動運転実用化が近年スピードアップしてきている理由としては、AIのディープラーニング(深層学習)の進化、センサー技術の進化、AI用半導体の進化が指摘される。

テクノロジー面だけを見ると、すでに一定条件下での自動運転は実現可能な段階に入っており、国家・企業間の競争のポイントは、どこの国家・企業が社会実装を真っ先に実現できるかに移ってきている。

自動運転が自動車産業にどのようなインパクトをもたらすのかを読み解くには、EV化、自動車シェアリングなどを含む次世代自動車産業全体を分析することが不可欠だ。

まず近未来のモビリティー産業において大きな影響力をもつと考えられているのが、ウーバーやリフトなどのライドシェア会社である。

これは、導入当初は必然的にコストが高い自動運転車を自家用として商業化するのは困難と見られている一方、ライドシェア会社であれば多くの利用者を対象として稼働率を高めていくことで比較的早期に収益化可能であると考えられているからである。

また世界的に進展しているシェアリングの動きからも、ライドシェア会社が「自動車はシェアして利用するもの」という価値観を急速に定着させてきている。

近年、「もっと暑くなる」という事態が進捗しているが、とくに2018年においては世界的に最高気温の記録を更新した地域が相次いだ。

環境保護やサスティナビリティー(持続可能性)の動きは、世界的な異常気象により、もはや多くの人たちが身体感覚的に必要だと考える水準にまで高まりつつある。

エネルギーを化石燃料からクリーンエネルギー中心に変革し、モノの利用ではシェアリングを進めるといった動きは、今後さらに拍車が掛かると予想される。

自動運転化が中核の1つとなる次世代自動車は、「AIが運転手」ということが指摘できるが、それを実現するのに「半導体消費」が著しいこと(AI用半導体が生命線となっていること)も特徴だ。

したがって、インテルやエヌビディア(NVIDIA)などの半導体メーカーもテクノロジー企業側の主要プレイヤーとなっている。

そうした一方で、もちろんトヨタ、ホンダ、日産やGM、フォードといった既存の自動車会社も、テクノロジー企業に対抗しようと巻き返しを図っている。

とくに安全性の徹底という最重要部分を担うのは、やはり日本勢を中心とする自動車メーカーだろう。

それでも既得権にはもはやしがみついていられないと社内外で危機感を高め、テクノロジー企業として、そしてモビリティーサービス企業として生まれ変わろうとしているのが既存の自動車会社なのである。

著者紹介

田中道昭(たなか・みちあき)

立教大学ビジネススクール教授

シカゴ大学ビジネススクールMBA。戦略論を専門として、経営を中核に政治・経済・社会・技術の戦略を分析する「戦略分析コンサルタント」でもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任。現在、株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に、『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(ともにPHPビジネス新書)など。

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