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在韓米軍撤退の悪夢 対馬海峡が軍事境界線に?

2018年12月07日 公開
2022年07月08日 更新

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

対馬海峡が軍事境界線に?

2018年6月にシンガポールで行なわれた史上初の米朝首脳会談は、明らかに準備不足であり、両首脳にとって会談そのものが自己目的化していた。

非核化に合意したものの、具体的な内容や手順は明らかでなく、その後、北朝鮮が秘密の核施設やミサイル基地をもっていることが明らかになった。

2019年の早い時期に2度目の米朝首脳会談が予定されているが、双方の政治的駆け引きで延期またはキャンセルされる可能性や、実現しても再び中身の乏しいものになる可能性も少なくない。

中国や韓国は北朝鮮への経済制裁の緩和を求めているが、北朝鮮が非核化に向けての具体的な行動を取らないかぎり、国際連合安全保障理事会決議に基づく経済制裁を緩めるわけにはいかない。

だが、もし北朝鮮が非核化への工程表を示して具体的な行動を取り、アメリカ本土を射程に収めた長距離ミサイルの廃棄を進めれば、南北とアメリカのあいだで朝鮮戦争の終結宣言を発する方向に向かうかもしれない。

これは、2018年4月に韓国の文在寅大統領と朝鮮労働党の金正恩委員長が会談した際に発した板門店宣言にも謳われている。

ただし、朝鮮戦争時の国連軍には、アメリカを含む17カ国が参加しているから、終戦宣言には国際法上のさまざまな議論があろう。

また、朝鮮戦争が法的に終結すれば、朝鮮国連軍は使命を失うから、横田など7カ所の在日米軍基地は国連軍基地として機能しなくなる。そのため、在日米軍と在韓米軍の関係に変化が生じるし、在沖縄米軍基地への反対運動も強まろう。

また、北朝鮮が経済制裁の網の目をくぐって、石油などを洋上で別の船籍の船に移し替えて密輸する、いわゆる瀬取りが国際的な問題になっている。

オーストラリアやカナダ、イギリスなどが、これに警戒活動を行なう際にも、現在は国連軍基地として在日米軍基地が支援しているが、これもできなくなる。

さらに、トランプ大統領がスタンドプレイで持論の在韓米軍の撤退や削減に動き出したらどうなるのか? 北緯38度線の軍事境界線が、対馬海峡にまで南下することにもなりかねない。トランプを「第二のカーター」にしてはならない。

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