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長濱ねる「本と向き合うことで"素の自分"を取り戻せます」

2018年10月11日 公開
2022年06月08日 更新

長濱ねる


写真:吉田和本

<<人気アイドルグループ・欅坂46のメンバーで、ソロ写真集『ここから』(講談社)が累計19万部の大ヒットの長濱さんは、グループ一の「読書好き」。本人の口から語られる読書論、後編。(聞き手:編集部)>>
 

経験できない世界を代わりに生きてくれる

――最近に読んだ本で、印象に残ったものを教えてください。

長濱 西加奈子さんの『おまじない』(筑摩書房)が大好きで、何度も読み返しました。8つの物語で紡がれている短編集で、少女やファッションモデル、妊婦など、さまざまな境遇の女性が描かれているんです。いままでは一冊の本を何度も読むことは少なかったのですが、『おまじない』は「あの言葉にもう一度触れたい」と思い、自然と手に取っていました。

――では、長濱さんにとって「大切な一冊」を挙げるとすると、何の本でしょうか。

長濱 選ぶのが難しいですが、重松清さんの『エイジ』(新潮文庫)ですね。学生時代に1カ月間、アメリカにホームステイしたことがあるのですが、荷物になるので持っていく本は1冊だけにしたんです。それが『エイジ』でした。

もともと気になっていた小説で、出発前に買ってカバンに詰め込んだのですが、ホームステイ先に到着する前に読み終えてしまって……(笑)。

――中学2年生の主人公が、同級生が連続通り魔事件を起こすという出来事を経て、さまざまな葛藤を抱きながらも成長していくストーリーですね。読み進めたいという欲が勝ってしまったのでしょう。

長濱 ただ、ホームステイ中にはやはり日本語が恋しくなるときもあって、そんなときは『エイジ』を繰り返し読んでいました。文字どおり、アメリカ滞在中の私を支えてくれた1冊なんです。

読書好きの方ならば共感してもらえると思うのですが、読み進めていくうちにどうしても止まらない本ってありますよね。私にとっては、辻村深月さんの『オーダーメイド殺人クラブ』(集英社文庫)もそうです。

『エイジ』と『オーダーメイド殺人クラブ』に共通するのは、両方とも主人公である学生が、大人に左右されずに自分の意志を貫く点。私は平凡な人間なので、彼らのように思い切った行動をとることはそう簡単にはできません。

ですから読み進めていくと、私が経験できない世界を代わりに生きてくれている、という感覚になるんです。憧れに近い感情かもしれませんし、目が離せなくていつしか最後まで読み切っている。読書好きにとっては、たまらない時間ですよね。

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