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財務省は巧みに大臣をからめとる 首相を引きずり下ろすのは野党ではなく与党!

2018年04月18日 公開
2022年10月27日 更新

竹中平蔵(東洋大学教授),ムーギー・キム(投資家)

「政策通」大臣の悲しき実態――官僚は政治家に「貸し」を作り、味方に引き入れる

竹中 もっとも、日本の政治家に政策能力が足りないことは事実ですね。何かあったら官僚に教えてもらうしかない。そこに官僚の生きる道があるわけです。官僚の最大の力は、政治家に貸しを作ることです。それによって政治支配から逃れることができる。

とりわけそういう訓練を徹底的に受けているのが、財務省です。財務官僚はすごい。ほぼ全員が手帳を持ち、何でも片っ端からメモしている。で、こちらでいろいろ話したら、3日後くらいに電話がかかってきて、「大臣、先日お話しされたことについて調べましたので、ご説明に伺ってもよろしいでしょうか」と来るんです。

たしかに使える情報をすべて調べて教えてくれる。これはすまんなということで、政治家は彼らに借りを作ってしまうわけです。 

しかも、相手は政治家だけではない。私が大臣を辞めた後でも、局長や次官が挨拶に来て、近々に発表する重要案件などについて説明してくれたりするんです。

それが、今でも来るんですよ。この人には誰々と、それぞれマンツーマンで担当者を決めているらしい。

キム いろいろ親切に教えてもらえると、心情的に絡め取られますよね。

竹中 そう。よほど強い信念を持つ政治家ならともかく、連日のように面倒を見てもらっていたら、言うことを聞いてしまいますよね。

しかも、官僚の言うことを聞く政治家には、もう一つ「特典」があるんです。官僚が新聞記者に対して「あの人は政策通だ」と吹聴してくれる。

見方を変えれば、メディアでよく言われる「政策通」とは、役人の言うことを聞いてくれる、官僚にとって都合のいい政治家という意味です。

「役人の言うことを理解できないアホではない」ということなんですよ。

キム たしかに麻生太郎さんとか、よく「政策通」と呼ばれます。財務官僚の言うことをよく聞いてくれるということなんですね。

そういえば先生も「政策通」とは呼ばれませんよね。呼ばれるとすれば「ユダヤの手先」とか「新自由主義者」とか「貧富の格差を広げた張本人」とか「脱税王」とか。先生、ひどいことやってますね(笑)。

竹中 全部言ったな(笑)。

キム つまり、メディアや官僚に応援される政治家というのは、往々にして既得権益にがんじがらめになって、結局何もやっていないということなんですね。さんざん悪評を立てられている人のほうが、むしろ既得権益に切り込んで国民のために戦っている。

そこに気づかず、メディアと一緒になって批判するのは虚しくないですか、ということですよね。


本記事は、新刊『最強の生産性革命 時代遅れのルールに縛られない38の教訓』より一部を抜粋したものです。

著者紹介

ムーギー・キム(ムーギー・キム)

投資家、『最強の働き方』『一流の育て方』著者

1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。ベストセラー作家としても知られ、近著に、『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)と、『最強のディズニーレッスン―世界中のグローバルエリートがディズニーで学んだ、50箇条の魔法の仕事術』(三五館シンシャ)がある。

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)

東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授

1951年、和歌山県生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒。2001年、経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任する。2013年、安倍政権で産業競争力会議有識者委員に就任。著書に、『竹中流「世界人」のススメ』(PHPビジネス新書)ほか多数。

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