2018年04月09日 公開
2023年08月07日 更新
――残念ながら、日本企業が「時代遅れ」な部分はほかにもありそうです。
ジェイソン あまりいいたくはないけれども、いっぱいあるよ(苦笑)。すぐ思い付くのは、何でも紙ベースなところ。
アメリカでは、1人のリーダーが、ある案件をやるかどうかをその瞬間に決めるのですが、日本では稟議書や決裁を回して、何人もの人間からハンコをもらってから進めることが多い。場合によってはハンコを押すためだけに出張先から会社に戻ることになりかねません。承認だけならば、メールでもできるはず。
――日本でも、電子サインなどを取り入れている会社もありますが、まだ主流ではありません。
ジェイソン アメリカではすでにかなり普及しているので、私も実物のサインをいつ書いたかは覚えていないくらい。
捺印にしてもサインにしても、少なくとも紙ではなくスキャンしたデータを送るだけでよいことにしないと、とても効率が悪い。日本のように、書類を2部用意して、片方を捺印して郵送するというのはとても時間がかかるし、お互い大変でしょう。
――現場は、疑問に感じていてもこれまでのやり方を踏襲している……という方が大多数だと思います。
ジェイソン 伝統の大切さもわかりますが、迷惑を掛けるシステムは見直すべきです。そして無駄なシステムがあるのは、主に経営者の責任です。
彼らはたんに、失敗を恐れているのでしょう。自分が会社に入ったときと違うことをして、何か問題が生じれば周囲から責められますから。
――「日本人は失敗しないために働いている」という先ほどの言葉のとおりですね。
ジェイソン 自分たちのやり方に固執し過ぎなんです。
私がテラスカイに入る前に、あるIT企業の日本法人を立ち上げるために来日して、日本企業に向けて営業活動をしたときも「アメリカで最先端のクラウドサービスを使えば、こうしたメリットがありますよ」と説明しても、「自分たちの会社のやり方と合えば考えます」というばかり。何でも自社のシステムにカスタマイズしないと気が済まないのです。
しかし過剰なカスタマイズは、かえって元のサービスの良さを消すことになりかねない。
――さらにいえば、カスタマイズには時間がかかるでしょうから、本末転倒。結果、世界の流れから置いていかれるばかりです。
ジェイソン アメリカでは、とくにIT業界で「ホイール(車輪)の再発明」という慣用句が用いられています。
たとえば、何か回転する製品を開発しなければいけないとします。アメリカ人は「すでにホイールというものが開発されているから、それを利用すればいいじゃないか」と発想します。しかし日本人は、「何を回せばいいんだろう」と一から考え始めます。これはホイールの存在を知らないか、その特性を誤解しているかのいずれかでしょう。
たしかに、考えることに時間を使う日本人のほうが、新たな発明をする可能性はあります。ただしその分コストや時間はかかり、世界の競争から置いていかれるリスクが増える。日本市場だけでお金が回っていた時代ならばそれでよかったのでしょう。
しかし、海外を相手にすると厳しい。いまITの世界で「日本発」のシステムが皆無に等しいのは、日本人自身のやり方自体に原因があるのです。
――そのほか、日本社会を見ていて疑問に感じる部分はどこでしょうか。
ジェイソン とくにテレビに出演していて感じるのは、日本のニュースが全部をごちゃ混ぜに報道している、ということですね。
――具体的に、何を混ぜ合わせているのでしょう。
ジェイソン 報道とエンターテインメント(芸能)です。たとえば「北朝鮮がミサイルを発射しました」と報じたと思ったら、次に「あのタレントが不倫したかもしれません」というニュースを紹介する。Why!? これでは何が本当に重要なニュースなのか、まったくわかりません。明らかに2つの情報の「重さ」は違うはずなのに。
最近では相撲問題を毎日、報道していましたよね。出演番組で「ジェイソン、どう思いますか?」と聞かれて「なぜこんなに報じているのか、理解できません」と思わずいってしまった(笑)。
もちろん日本人にとっての相撲の大切さはわかっているつもりですが、事件に進展もないのに報じようとする姿勢には違和感を覚えました。
更新:11月25日 00:05