2018年04月09日 公開
2023年08月07日 更新
――いまの話は、たしかに多くの日本企業に通じるかもしれません。
ジェイソン アメリカではつねに「最近、あなたは何を成功させましたか?」と聞かれます。また、アメリカで「働きたい企業ランキング」の上位3位に必ず入る回答が、「自分の企業を創業する」。日本社会でも、若いビジネスパーソンのなかには他社で新しい挑戦をしたり、自分で会社を立ち上げたりと、チャレンジする人が増えていますが、まだ絶対数が少ない。
GEでは私を含め、3年の研修を終えた直後に辞めた同期がほとんどでした。「いろいろ教えてくれてありがとう、これからは自分がやりたいことをやります。ごっつぁんです」という感じ(笑)。
――日本のビジネスパーソンには、「会社」や「部署」には恩返しをすべきという意識が強いので、簡単には割り切れないのかもしれません。
ジェイソン もちろん、それが日本人の美徳であることはわかっていますし、守り続けるべき部分だと思います。
会社が潰れそうなとき、多くの日本人は自分の人生を犠牲にしてでも会社のために頑張るでしょう。実際に、それが原動力となって会社が復活した例は、数え切れないほどあると思います。アメリカだとどんどん社員が流出して、その会社は倒産待ったなし(笑)。日本のような事例はありえません。
ただし、私はアメリカ人のような労働意識にも、多くのメリットがあると思います。退社した社員に、次の場所で成功する可能性があるからです。
アメリカには、百年続く会社は少ない。その代わりに人材の入れ替わりが激しいので、若くて素晴らしい企業がたくさんある。うまく時代の流れをキャッチアップして、社会や経済を活性化させる可能性を秘めています。
――つまり、1つの会社に深く考えずに在籍し続けるのは、個人にとっても社会にとっても得策ではない、と。
ジェイソン 日本のビジネスパーソンを見ていて残念だと思うのは、自分が本当は何をやりたいのか、また何に向いているのかに目を向けないまま、1つの会社に骨を埋める人が多いことです。
たとえば、ある仕事で結果を残せなくても、深夜まで残業して頑張っているから仕方がない、という風潮がありますよね。時間をかけてもダメならば、はっきりいってその仕事が向いていないということ。ただし「向いていない」とは、ネガティブな意味ではありません。その仕事では結果を残せなくても、同じ人が違うジャンルではものすごい能力を発揮するかもしれない。
――環境を変える勇気が、その人の可能性を拡げることにつながりうるのですね。
ジェイソン やりたくないこと、向いていないことに時間をかけるのは、お互いに損しか生みません。とくに生産性が叫ばれる現在では、「時代遅れ」です。向いていないことが誰の目にも明らかなのに、環境を変える行動を起こさないのは、その人が「自分の人生を大切にしていない」証拠でしょう。
また、雇用のミスマッチを放っておく企業側も、社員を大切にしているとはいえないのではないでしょうか。経営的に損しか生まない状況を見過ごしているわけですから。私の目には、社員だけでなく会社そのものを大切にしていない、と映ります。
更新:11月22日 00:05