――これからの日中関係を考えるうえで『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか』で展開されたような思想史を振り返ることは、どんな意味をもつでしょうか。
石 中国からさまざまな影響を受けてきたことは間違いありませんし、それをことさら否定する必要はありません。しかし、これまで述べたように、日本人はそのなかでも独立した精神を培ってきました。こうした歴史に学び、是々非々で中国と対等に渡り合うことこそ、これからの日本に求められることなのです。
石 私もよく「中国は歴史があり、本当にすごい国ですね。日本もお世話になりました」と声を掛けていただくのですが、決まって「やめてください、中国は何の世話もしていませんから」と答えるようにしています。ヨーロッパに目を向けてみてください。西洋文明の始まりはギリシャでしたが、イギリスやドイツ、フランスがギリシャに頭を下げているでしょうか。むしろ、彼らは自国の文化をしっかりと主張しています。
聖徳太子以来の思想史に目を向け、「中華コンプレックス」を乗り越えて、日本に誇りをもつ。健全な二国関係とは、互いに対等であるという意識があって初めて成り立つものです。これは何も日中関係に限りません。
いまの日本人に求められるのは、そうした当たり前の態度ではないでしょうか。
(本記事は『Voice』2018年3月号、石平氏の「儒教ではなく仏教を選んだ聖徳太子の思想戦略」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の3月号をご覧ください)
更新:12月04日 00:05