2017年07月09日 公開
2024年12月16日 更新
蔡英文総統はパナマの断交宣言を受けて6月13日、記者会見を行ない、次のようにコメントした。
「われわれは、国家利益が再び恫喝と挑戦を受けるようなことを、決して座視するつもりはない。圧力と恫喝によって両岸の差異が近づくことはない。むしろ双方の人民の距離は疎遠になるのだ。私は2300万人の台湾人民を代表して、ここに表明する。われわれは絶対、恫喝のもと妥協や譲歩を行なうことはない!」
どちらかというと中国を刺激しないように言動には慎重であった蔡英文にしては、いつになく激しい言葉で中国に警告したのだった。それほど、中国のパナマ断交工作は、蔡英文のメンツをつぶし、怒り心頭であったということだろう。
なにせ、蔡英文が昨年5月20日に総統に就任して、最初に外遊先に選んだのはパナマだったのだ。約1カ月後の6月26日の運河拡張工事竣工式典に正式招待され出席、台湾とパナマの両国友好関係を確認した。パナマ政府はこの式典に中国の習近平国家主席も招待したのだが、中国は「中国は、1つの中国原則を基本前提にして他国との関係を扱い、発展させていく」として断った。
一方、蔡英文はこのとき、パナマをつなぎ留めるために、投資・経済支援の増加を約束。1990年代から振り返ると累計10数億ドルの経済支援・投資を行なっている。この断交宣言の1カ月前にも、パナマ政府の農業安全プロジェクトに290万ドルの経済支援を約束する調印式を行なったばかりだった。これは台湾・パナマの2014~19年の共同プロジェクトの1つ。断交1カ月前の5月10日付のパナマ紙には、外務次官と駐パナマ台湾大使・劉徳立が、中華民国旗の翻る前で調印後、にこやかに握手している写真が掲載された。台湾からすれば、まさにパナマに食い逃げされた、ということになる。
しかもパナマ政府側は、突然断交宣言したあと、30日以内の台湾大使館の撤去を要求。台湾サイドは残務処理に最低2~3カ月かかると引き延ばしを訴えているが、このてのひらを返したような冷遇も、台湾のプライドを踏みにじるものといえた。
(本記事は『Voice』2017年8月号、福島香織氏の「日本が台湾の『孤立化』を防ぐ」から一部抜粋したものです。続きは7月10日発売の8月号をご覧ください)
更新:12月22日 00:05