2017年03月03日 公開
2022年11月09日 更新
マスコミが報じるとおり「日米関係に最も影響を与えそうなのが在日米軍の駐留経費問題」なら(2016年11月10日付『朝日新聞』朝刊)――もし単にそれだけの話なら――、日本が全額負担すればいい。たしかに「日本の米軍駐留経費の負担率は74.5%で、ドイツの32.6%、韓国の4.0%と比べてもかなり高い」(同前)。
だが、そう政府やマスコミが合唱するとき、日本と違い、ドイツや韓国が集団的自衛権を行使でき、実際に武力行使を伴う集団安全保障措置にも参加してきた事実を忘れている。他方、日本は「小切手外交」「卑怯な商人国家」と揶揄批判されてきた。
あえて自虐的に言えば、全額負担の残りは25.5%。その程度のカネで解決できるなら、日米同盟の見通しは明るい。今後も「小切手外交」と言われ続けることを甘受するなら……。
しかしトランプ候補が、アメリカの同盟国に求めてきたのは「応分の負担」である。防衛費の対GDP比で言えば2%以上。ならば現状の倍額となる。悲しいかな、そうした危機感が政府にもマスコミにも乏しい。
増大する防衛費を何に使うべきか。駐留経費増に充あ てるのはもったいない。間違いなくトランプ政権は国際秩序への関与を低下させていく。結果、日本周辺にも「力の空白」が生まれ、抑止力は低下する。そのとき何が起きるか。『カエルの楽園』(百田尚樹著、新潮社)が現実になり、日本は地獄と化す。
自衛隊は「矛」を持たず、高価な「盾」ばかり保有している。いまこそ「打撃力」(攻撃力)の保有に踏み出すべきだ。「空母保有の選択肢」(前出『産経』)も真剣に検討すべきである。かねて私が訴えてきた「日本版海兵隊の創設」も決断すべきときではないだろうか。
これまで日米同盟は「矛」の役割を、すなわち「打撃力の使用」を、すべて米軍に担わせてきた。そのリスクとコストを押しつけてきたと言ってもよい。とうてい「正しい」同盟とは言えない。
トランプ政権に求められて駐留費を払い、防衛費を増やすなら、「属国」との誹りを免れない。わが国が本来やるべきだった「正しい」政策を実現実行する。そのとき初めてフェア」な日米関係が生まれ、日本の「戦後」が終わる。
これまで「戦後」と呼べたのは、あれから戦争が起きなかったからでもある。「戦後の終わり」は、新たな戦争の到来ともなり得る。われわれは、そうした覚悟で今回の結果を受け止め、将来を見据えねばならない。
※本記事は潮匡人著『日本の政治報道はなぜ「嘘八百」なのか』(PHP新書)より、その一部を抜粋編集したものです。
更新:11月22日 00:05