2017年01月20日 公開
2022年12月07日 更新
私は約3年前、本誌『Voice』(平成25年12月号)に寄稿した拙稿「『反日』歴史教育の真犯人」で、
「韓国の大統領の任期は5年である。次の韓国大統領選になったとき、朴大統領に投票した世代は弱体化し、従北派(※筆者注・北朝鮮の思想や政治理念などに従う人びと)の勢力がますます勢いを得ていく可能性がある」
と予測したが、いまやそれが最悪のかたちで現実になろうとしている。
2016年10月に発覚した「崔順実ゲート事件」で韓国が揺れている。
朴槿惠大統領が「心友」である崔順実に国家の秘密情報を渡し指南を受けていたとされるほか、崔順実が私物化していたミル財団やスポーツ財団等への資金拠出を大企業等に強要。娘の不正入学やセウォル号の沈没事故で当日の朴大統領の動静不明(空白の7時間)に彼女が関わっていたのではないか、など多くの疑惑が持ち上がった。
崔順実は新興宗教の総裁、崔太敏の娘として生まれた。崔太敏は朴大統領の母親である陸英修が暗殺されたのち、朴槿惠大統領に近づきその信頼を得ていった。朴正熙暗殺事件を引き起こした金載圭中央情報部長は、暗殺の動機は明らかになっていないものの「崔太敏と朴槿惠が部屋に入れば、1日中出てこない」という噂や、「韓国のラスプーチン」といわれ、青瓦台(大統領府)に影響力をもちつつある彼の経歴・不正・利権介入に関する報告を朴正熙大統領にしたものの、受け入れられなかったことが一因とする説が浮上している。
崔順実は朴槿惠の無二の友人として長きにわたり影響力を有していたが、韓国国民は自らが選んだ大統領が得体の知れない新興宗教に操られていたという事実に衝撃を受け、朴大統領の即時退陣を求めて青瓦台前で数100万人の人びとがろうそくデモを行なった。
だが朴大統領と崔順実との関係は以前から囁かれており、2014年に『産経新聞』の加藤達也元ソウル支局長が、朴大統領の男女関係に関する噂を取り上げたとして在宅起訴された際、青瓦台の指示で捜査が進められ「崔順実との関係をどこまで知っているのか」と何度も尋問されたという。さらには金淇春・青瓦台秘書室長が「『産経』を忘れてはならない。懲らしめなければ」などと青瓦台が主導して不当な言論弾圧を指示したメモが公表されている。
「崔順実ゲート事件」は韓国経済にも大きな波紋を呼び、アメリカでは「海外腐敗行為防止法(FCPA)」により米国および海外企業が贈収賄などで処罰を受けた場合、公共事業入札への参加を認めていないため、この事件の結果いかんで韓国企業が経済的打撃を受ける可能性は高まることになる。
またこのニュースが海外でも大々的に報じられたことで、韓国企業のイメージが悪化し、輸出減少に繋がる可能性もある。すでに経済協力開発機構(OECD)はこの事件を主因として、2017年の韓国の経済成長率予想を0.4%下方修正した。
そして2016年12月9日、ついに朴大統領に対する弾劾訴追案が可決され、大統領としての職務が停止した。
今後は最長180日かけ、憲法裁判所が「弾劾は妥当」と判断した場合、大統領を罷免されることになる。この場合、本来2017年12月に予定されていた大統領選は同年春から夏には行なわれるのではないか、との見方が浮上している。
更新:11月26日 00:05