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商社マンボクサー・木村悠の強さの秘密 「最後は、精神力で勝敗が決まる」

2015年11月28日 公開
2024年07月30日 更新

木村悠(プロボクサー)

いよいよ世界が見えてきた

——陸上や水泳に比べると、ボクシングはマイナースポーツのイメージがあります。自費で遠征する選手も多いようですが、そういった現状についてどう思われますか。

木村 マイナー競技の選手が、たとえばサッカーや陸上の選手と同等の金額をもらうのは、フェアではないと思います。そもそも競技人口が段違いですし、マスコミの注目度も異なります。マイナースポーツであれば、自分たちで競技の見せ方をもっと工夫し、お客さんや各種のスポーツ団体・組織がお金を出したくなるようなイメージを打ち出す必要があるのではないでしょうか。メディアに取り上げられる選手が増えれば、自然と観客も増えますし、注目も集まります。同じアマチュアスポーツのバレーボールがテレビであれだけ盛り上がりを見せているのも、協会がメディアへの訴えかけに力を入れたからでしょう。

——メディアへの露出以外で、ボクシングを盛り上げていくのに必要なことは何かありますか。

木村 日本でも海外のようにカジノでの試合があれば、盛り上がると思いますよ。ボクシングは興業的に成功しないとファイトマネーが上がりません。世界で最も稼ぐアスリートは、じつはボクサーが多い。経済誌『フォーブス』が発表している世界のスポーツ選手長者番付で2012年と14年に1位となったのはフロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)です。彼は1試合で50億円ほど稼ぎます。カジノでボクシングが開催されれば、運営側のホテルも儲かりますし、TV視聴のペイ・パー・ヴューも入る。もちろんボクシングに限らず、海外からの観光客や、国内で働く外国人が娯楽を楽しむ場所は日本に必要だと思います。その点、シンガポールやマカオは先進国で、スポーツビジネスに力を入れ始めています。全世界のファンをターゲットにする発想でないと、この先アスリートが競技を続ける環境はさらに厳しくなるでしょう。

——ボクシングにあまり興味をもたない人が会場に来てもらうためにはどうしたらいいですか。

木村 世界王座戦のようにメジャーな試合でいいので、テレビではなく会場に足を運んで、ぜひ生で観戦してもらいたいですね。観戦後は、ボクサーが出る本や雑誌、ブログを見て、その選手本人の素顔を知ってもらえれば、ボクシングの見方も変わると思います。

——次の目標はやはり世界チャンピオンですか。

木村 そうですね。2014年2月に日本チャンピオンになって初めて世界が視野に入ってきた。狙っていきたいです。ただその前に、一戦一戦勝ちを積み重ねて自分のスタイルを確立するほうが大事です。理想とする世界チャンピオンのイメージがあるとしたら、そこから逆算して、いつまでに、どのレベルまで自分を近づけていくか、道筋を立てていくことを意識しています。

2014年11月1日に防衛戦が決まっていますが、そこでしっかり勝って、来年の春から夏ぐらいまでのあいだに世界チャンピオンになりたい。所属先の帝拳ジムには、いま世界チャンピオンが二人います。さらに先日、ロンドン五輪金メダリストの村田諒太選手が加入しました。彼は身体感覚が鋭くて、細かい点まで選手の動きを観察している。よくアドバイスをもらって参考にしています。

さらに帝拳では海外のトップ選手のプロモート(興行)をしている関係で、合同で練習できる機会も与えられます。そういった環境に身を置くことで、テクニックだけでなく精神面も磨き、世界チャンピオンへ近づきたい。現状に甘んじるのではなく、仕事との両立も続けて自分を高めていきたいです。   

 たぶん、自分はサラリーマンをやってなかったらボクシングを途中で辞めていた。営業の仕事を始めたことで日本チャンピオン、世界チャンピオンになれた、と胸を張っていえるように、リングの上で力を証明していきたいと思います。

※本記事は2014年『Voice』11月号に掲載されたものです

 

 

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