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[PHP総研からの提言] 2012 年総選挙に望むこと〔1〕

2012年11月22日 公開
2023年09月15日 更新

政策シンクタンクPHP総研

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政策シンクタンク PHP総研では、来る総選挙に向け、「2012年総選挙に望むこと ~政治への信頼を回復させ、日本を活性化させるために~」を発表しました。
総選挙に臨む各党が、国民の選択のために何を明らかにすべきなのかを、経済、地方行政、教育、外交・安全保障、政治への信頼の観点から提言するものです。
ここでは、2回に分け、その内容をご紹介いたします。
   

2012年総選挙に望むこと 
~政治への信頼を回復させ、日本を活性化させるために~

 自民党から政権を奪取した民主党は3年余にわたる政権運営の中でさまざまな課題の解決に挑んできました。しかし、その実績は有権者の期待を満足させるものにはなりませんでした。決められない政治、先に進めない政治を払拭し、日本を再び活力あふれる国にしていくために、政治は何をすべきなのか、どのような政策に着手し、それをいかなる方向にすすめなければならないのか。各党すでにマニフェストの内容を提示しつつありますが、政治への信頼を取り戻すために、各党が総選挙において何を明らかにし、選挙後に力強い実行を期していくべきか、国民に示すべきことを提言します。

【 提言1 】
経済成長・税財政・社会保障を連動させた総合的な政策を示せ

(1)社会保障改革と雇用政策を一体化した政策を
 65歳までの雇用義務付けが企業の活力を損なってはならない。企業が活性化しかつ働くものが潜在力を発揮できるように、雇用の流動性を高めるとともに、働くものが学び直しによって能力の向上ができる環境の設定が重要である。経済的に自立した人が増えれば、年金の支給開始年齢引き上げや医療費の高齢者負担増などについての国民的理解も深まるはずである。歳出抑制と税収増加という一石二鳥の効果をねらうべく、社会保障改革と雇用政策を一体的に進めていく具体策が求められる。

(2)効果的かつ効率的な予算執行のための仕組みをつくる
 深刻な財政状況を踏まえれば、いかなる政権が成立しようとも、効果的かつ効率的に予算が執行されるよう努めなければならない。民主党政権によって事業仕分けをはじめとした政策レビューが本格化したものの、その結果が十分に反映されたとはいいがたい。各党は、こうした仕組みの実効性を高める方法について具体的な解答を示すべきである。

(3)総合的な政策の司令塔となる機能をいかに担保するか
 経済成長・税財政・社会保障、そして雇用を連動させた総合的な政策を検討し遂行していくためには、それを司る中枢機関が必要である。民主党政権で設置された国家戦略会議は十分な権限を持たなかったこともあって、各省庁の政策を方向づける強力な政策立案機能を果たすにはいたらず、自民党政権時代の経済財政諮問会議を超えるものとはならなかった。官邸機能の強化も含め、国の基本政策の司令塔となる機能をいかに担保していくか、その方法が問われている。

(4)実効性のあるエネルギー・パスを描く
 国民生活を支え、経済成長を実現する上で、安定したエネルギー供給は不可欠である。各党とも実効性のある新しいエネルギー・パスを示す必要があるが、その際、地元対策費や事故対応費用などの社会的費用も含めて各選択肢の費用対効果を検討しなければならない。将来的に脱原発依存を目指すにしても、原発を維持するにしても、原発の安全性を高めることは喫緊の課題であるが、急速な脱原発依存については、それに伴う不拡散政策への影響も十分考慮する必要がある。環境負荷が低くエネルギー効率の高い都市づくり、スマート・グリッドなどによるエネルギー・ロスの縮小、送電事業と発電事業の分離などを含めて、エネルギー政策の包括的パッケージを提示することが求められる。

(5)総合的な方針の下でTPPに対する姿勢を明確にする
 TPPなどを通じた国際経済連携や国際的ルールづくりでイニシアチブをとることは、日本経済の未来を切り開き、開放的でルールに基づいた地域経済、世界経済の発展をはかる不可欠の要素である。他方で、TPPが国内の産業構造に大きく影響をあたえ、特定産業に打撃をあたえることへの懸念も根強い。各党は、TPPに対する姿勢を明確にするとともに、経済の自由化に対していかなる基本姿勢をとるのか、どのような地域経済秩序、世界経済秩序を求めていくのか、農業分野を含め国内的な調整をいかに行っていくのかについて、総合的な方針を示さなければならない。

 

【 提言2 】
復興を加速化させる具体策と地方分権・道州制に対する立場を示せ

(1)現地現場主義に基づく復興のあり方を描く
 東日本大震災の発生から1年9か月が過ぎたが、復興の歩みは期待されたほど早くない。復興庁は被災地に移転し、担当大臣は地元知事が兼任するなど、復興のあり方を地域主導型に転換する必要があるのではないか。復興予算の流用問題にしても、復興が現場主導で行なわれていないことに起因する。復興の速度を上げ創造的な復興を実現するため、現地現場主義に立脚した復興体制の見直しが検討されねばならない。

(2)被災地を全国で長期的に支える方策を示す
 被災自治体の復興は正念場を迎えているが、都市計画や産業政策などの専門性の高い行政職員が不足していることに目を向ける必要がある。これまでにも様々な職員派遣が行なわれているが十分とはいえず、一方、派遣元の人的・財政的負担も大きなものとなっている。行政組織間の人的マッチング機能強化や派遣元の負担軽減など、復興の歩みを全国で息長く支えていく方策の提示が求められる。

(3)地方分権改革・道州制に対する具体策を明らかに
 国会が「地方分権の推進」を決議してすでに20年になる。明治以来の国のかたちが今日の社会環境に適合できなくなったことは明白で、わが国を覆う財政逼迫や経済停滞もそれと無関係ではない。民主党政権が地域主権改革の一環として設置した「国と地方の協議の場」は、分権改革の政策決定プロセスを分権的にするものとして評価できるが、これまでの中央集権的体制を変革するものではなかった。復興を果たし日本を再活性化させるためには、内政に関する権限の大部分やその役割に見合う税財源を国から地方に大胆に移譲し、地域のことは地域が決めるという国のかたちに転換する必要がある。各党には地方分権改革、さらには道州制に対する姿勢とその実現に向けた具体策を示すことが期待される。

 

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