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なぜモテない? 「パートナー探しが無理ゲー」になった進化論的背景

2022年07月25日 公開

橘玲(たちばなあきら:作家)

 

魅力をつくるのは自己責任

――本書に「女性は男性に会って2~3分で相手の知性を判断する」と書かれていて驚きました。「知性」という内面的な要素でさえ、瞬時に感じ取れるものなのですね。

【橘】女性に備わる超高性能センサーが、言葉だけでなく微妙な表情まで無意識のうちに読み取り、「賢そう」「面白くなさそう」と瞬時に判断しているようです。知性は複雑な社会を生き抜くのに必要不可欠なスキルなので、パートナーを選ぶ際の重要な判断基準になるのでしょう。

――「人を見た目で判断してはいけない」とよくいわれますが、相手の第一印象から多くの情報を受け取っているわけですね。

【橘】男も女性を外見で判断していますからね。進化の視点からみれば、男にとって最も重要なのは女性の年齢です。若いほど多くの子どもを産めるからです。もちろん女性が年齢を書いた札をつけているわけではないので、肌や髪のツヤ、体型などから実年齢を推測します。

男はウエストの細い女性により魅力を感じるという研究があります。妊娠していない確実な証拠だからです。他人の子を身ごもっている女性に資源を投じても、自分の子孫は残せません。

――また男女ともに、相手を選ぶ際には「心が健康かどうか」も判断しているそうですね。

【橘】精神的に不安定な男性は、子育てのよいパートナーになれないと判断されて、選択肢から排除されてしまいます。身体的な健康だけでなく、心の健康を維持するような自己管理が重要だと書かれています。

パーソナリティのほぼ半分は遺伝で説明できますが、「神経症傾向」も例外ではありません。

これまでは「女は男より神経質」とされてきましたが、近年では神経症傾向に性差はなく、表れ方が異なるだけだと考えられています。世界的な統計をみても、鬱病になる比率は女性のほうが高いのですが、その一方で自殺率は男性のほうが高い。

神経症傾向が強い女性は感情を内に抱え込んで鬱になりますが、男性はアルコールやドラッグに依存しやすく、生活が破綻して自殺してしまう。攻撃性が社会に向かうという傾向もあるでしょう。

――「自分の魅力に責任をもつ」という言葉も印象的でした。

【橘】著者たちはリバタリアンなので、当然、「モテるようになるのは自己責任」という話になります。

学業や仕事で成果を出す、趣味を見つけて楽しむ、身だしなみに気を付けて自分の外見を好きになるなど、何か1つでも誇れるものができれば、それが自信につながり、女性を惹きつけるでしょう。

重要なのは、ますますリベラル化する社会では、倫理的・道徳的なモテ戦略以外にないという主張です。それ以外の方法は、レイプ訴訟などの大きなリスクがある。

安易な「ナンパ本」を信じると、恋人ができないばかりか、人生そのものが破壊されてしまうという危機感がこの本を書かせたのでしょう。

「進化論的モテ戦略」はものすごく効果があるので、若いときにこの本と出合ったかどうかで、人生は大きく変わるでしょう。男の子をもつ親や教育関係者にも広く読んでほしいと思います。

 

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