2022年03月14日 公開
2024年12月16日 更新
――『劇場版 呪術廻戦0』では、呪霊を祓う呪術師のなかで最強と呼ばれるキャラクター・五条悟が「愛ほど歪んだ呪いはないよ」と語る印象的なシーンがあります。呪いにおける「愛」の位置づけに関してはどう考えられますか。
【小松】恋愛感情というものは厄介ですからね。関係が上手くいっているときはいいのですが、ひとたびこじれると、愛情にかけた想いの分だけマイナスに作用してしまいます。
――「愛憎」という言葉があるように、愛と憎しみは表裏一体なのでしょう。
【小松】そのとおりです。また、日本の文化作品をみていくと、恋愛よりも義理と人情を強調する内容が多いですね。集団のなかで生まれる友情や上下関係などの人間関係にしても、情があってこそ深みが生まれます。それこそ『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』は『週刊少年ジャンプ』の連載作品ということもあるからか、義理と人情を重視する特性が脈々と流れています。
――物語を盛り上げるうえで、登場人物の感情の起伏は重要な要素の一つです。
【小松】私は最近のエンタメ作品自体について特段詳しいわけではありませんが、『鬼滅』にせよ『呪術』にせよ気になったのは、登場人物や術の名前がやたらと複雑で難しいことです。
『鬼滅』の主人公の名前は、皆さんご存知のように「竈門炭治郎」。でも、大人であっても、「竈門」を漢字で書ける人のほうが少数でしょう。『呪術』に登場する術式の名前も難解なものばかりですが、現在の若い人たちは、それがむしろカッコイイと感じるのでしょうか。オリジナルの術の名前をあれほど次々と編み出している点には、思わず感心してしまいますが。
――同作では、さまざまな呪術を使う呪術師たちが登場します。人気キャラクターの狗巻棘(いぬまきとげ)は「呪言師」と呼ばれ、自身の発する言葉に呪力をのせることができます。呪いと言葉はどういう関係にあるのでしょうか。
【小松】私は、誰かに危害を加えるために神秘的な方法に訴えかけることを「呪いのパフォーマンス」と呼んでいるのですが、言葉を用いるのはその一つです。たとえば、密教で真言を唱えるのも呪術の一形態です。一方で『呪術』での狗巻は「動くな」「爆ぜろ」などひと言口にするだけで呪術を発動していますから、特別な力をもっているともいえます。
ちなみに、「呪いのパフォーマンス」といえば呪文を唱えることよりも、一般的にはわら人形に釘を刺す行為のほうがイメージしやすいかもしれません。『呪術』の主人公の同期である釘崎野薔薇(くぎさきのばら)も、これまた名前が難しいのですが(笑)、名前にあるように釘を使った呪術を発動します。これは「呪いのパフォーマンス」の典型例をモチーフとしているのでしょう。
呪言を発する狗巻棘
『劇場版 呪術廻戦 0』予告(YouTube、© 2021「劇場版 呪術廻戦0」製作委員会 ©芥見下々/集英社、https://www.youtube.com/watch?v=h3YKB_XWcb4)より引用。
更新:12月27日 00:05