舞台『陰陽師 生成り姫』が、東京・新橋演舞場(2022年2月22日~3月12日)と京都・南座(3月18日~24日)で上演される。原作はこれまでも映画や漫画、歌舞伎などの題材となった夢枕獏氏の人気同名小説。舞台は平安時代、聡明な陰陽師・安倍晴明と、その友人で管弦の名手である源博雅が、心の奥に潜む鬼に蝕まれた徳子姫を救うために奔走する物語だ。
今回、主演の安倍晴明役を務めるのは俳優の三宅健さん。本作の見どころや制作秘話、いま陰陽師を演じる意味をどう捉えているのか、三宅さんにうかがった。
※本稿は『Voice』2022年3⽉号より抜粋・編集したものです。
――三宅さんは、本作で演じる安倍晴明についてどのような人物だとお考えでしょうか。
【三宅】安倍晴明といえば、冷静沈着で聡明なイメージをもたれる方が多いかもしれません。本作の晴明は、そうした部分をもち合わせつつ、林(翔太)君が演じる源博雅との関わりのなかで、自らの感情を出していきます。マキノノゾミさんの脚本と鈴木裕美さんの演出で、これまで世に出た作品以上に、晴明の人間らしい部分を感じていただけると思います。
――最初に脚本を読んだとき、どのような感想を抱きましたか。
【三宅】まず感じたのは、夢枕獏さんの素晴らしい原作に対するリスペクトです。本作ではそこにオリジナルの要素が加わっているのですが、とくに肝になるのが、先ほどもお話しした晴明が感情を発露する場面です。また、晴明と博雅の関係性や、第三者が絡んだなかでの二人の軽妙なやり取りにも注目してほしいです。会話劇としても十分に楽しめる作品だと思います。
――その晴明と博雅の関係性について、三宅さんはどうご覧になりますか。
【三宅】互いが自分にはないものをもっているからこそ、惹かれ合い、そして必要としている間柄なのではないでしょうか。博雅はとても純粋無垢な人物で、晴明はそんな彼の真っすぐさを愛おしく感じています。
晴明は精霊から「我々と同類と思っておったが」と言われるところからもわかるように、周囲から人間離れした者と見なされています。人間と物の怪の狭間にいるような晴明を、「人」としてつなぎとめてくれる存在が博雅なのだと思います。
――晴明が博雅と接するとき、いつも冗談でからかいながらも、根底では信頼しているように見えます。
【三宅】殿上人で自分よりもずっと地位が高い博雅に対して、晴明は「博雅」と呼び捨てにしています。それほど砕けた関係性を築けるのも、互いへの信頼があればこそ。本作では、晴明が博雅に対して「お前はよい男だ」と語りかける場面が何度か出てくるのですが、博雅はいつもからかわれていると思い、その言葉を最初は真に受けません。
しかし、物語が進むにつれて、その言葉の意味合いや博雅の受け取り方が変わってきます。お客様も晴明と同じ視点から、純粋すぎる博雅の心情や愛おしさを感じられると思います。
――博雅を演じる林翔太さんは同じくジャニーズ事務所の後輩ですが、かねてより三宅さんのことを憧れの存在だと口にされていますね。
【三宅】林君と初めて一緒になったのは『滝沢歌舞伎』でした。彼は、当時は(ジャニーズ)Jr.でしたが(2020年6月にジャニーズJr.を卒業)、まさに「スーパーJr.」でした。何事にも器用で、才能があふれていました。今回、ともに芝居ができることを、僕自身も楽しみにしています。
――『陰陽師 生成り姫』は平安時代が舞台です。当時の空気感や衣裳も見どころの一つでしょう。
【三宅】そうですね。時代物では衣裳がとても重要な要素です。本作では平安時代らしい華やかで優雅な服をまといますが、いまの時代、たとえば烏帽子を被る機会はほとんどありません。しかし、当時は烏帽子を片時も外さずに生活をしていましたし、他人に触られてはいけないものでした。
このように、日本古来のしきたりや作法に触れることができるのも、時代物の魅力だと思います。僕はもともと和装が好きなのですが、今回あらためてその魅力の虜になりました。古き良き日本の文化の素晴らしさを、お客様にもぜひ感じ取っていただきたいです。
更新:11月21日 00:05