――小栗さんはこれまでの大河ドラマで、石田三成(幼少時代、『秀吉』『天地人』)、吉田松陰(『八重の桜』)、坂本龍馬(『西郷どん』)など名だたる人物を演じてきました。とくに印象に残っている役はありますか。
【小栗】挙げていただいた三つの役はどれも印象深いですね。いずれも作品の脚本が面白くて、人物の魅力を引き立ててもらいました。なかでも石田三成は長く携さわった作品だったので、彼の人生に深く向き合う貴重な機会になりました。
松陰先生は登場する話数自体は少なかったのですが、演出の方から「今回の吉田松陰は、『ONEPIECE』のルフィのように元気なイメージで演じてほしい」と言われて驚いたのを覚えています。実際に最初の撮影は、凧を揚げてダッシュするシーンでしたからね(笑)。想像していた松陰先生とは違うキャラクターだったこともあり、とても印象深いです。
今回は北条義時とじっくりと向き合う機会をいただいて本当に有り難いですし、大河ドラマで主役を演じられる醍醐味を感じています。
――北条義時は過去の大河ドラマでは『草燃える』で松平健さんが演じられました。同作と比べて『鎌倉殿の13人』の義時は「ここが違う」という点はありますか。
【小栗】『草燃える』は全話観ましたが、鎌倉時代の雰囲気を大切につくられた作品だと感じました。
一方で今回の『鎌倉殿の13人』は、やはり三谷さんが脚本ということもあり、現代風で観やすい作品に仕上がっていると思います。もしかしたら、歴史や大河ドラマが好きな方からの評価は分かれるかもしれません。
でも、あの時代に決断を迫られる難しさや葛藤はしっかりと描いています。その点を意識して観ていただければ、どなたにも楽しんでもらえるのではないでしょうか。
――逆に歴史にあまり詳しくない人や若い世代に注目してほしいポイントはありますか。
【小栗】そのまま気負うことなく観ていただければいいんじゃないかな。前提知識や世代を問わず楽しんでもらえる作品だと思います。源頼朝が鎌倉時代をつくり、北条泰時が中心となって御成敗式目を制定させた――。これくらいしか知らない人でも、楽しんでいただけますよ。
――本作のテーマの一つである「権力争い」は、古今東西を問わないテーマです。小栗さん自身は権力をめぐる抗争について、どのように考えていますか。
【小栗】おっしゃるように、ドロドロとした権力争いはいつの時代もありますよね。人間同士で生きている以上はどうしても避けられない部分はあるし、一概に「醜いもの」とはいえないでしょう。
ただし、今作では権力を欲した裏側にどんな物語があったのかを観ていただきたいですね。たんに野心のために動いているのではなく、その背景には悲しみがあったのかもしれない。僕が演じる義時はまさに権力争いに巻き込まれていった男です。
いまの時代も政治的な争いが繰り広げられていますが、それに関わる人の本来の心根を想像すると、見え方が違ってくるはずです。人の内面を探るという意味でも、ぜひ幅広い層の方に『鎌倉殿の13人』を観ていただけたら嬉しいです。
更新:10月09日 00:05