2022年1月9日(日)より、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が放送される。主人公の北条義時を演じるのは、これまで数々の役柄を演じてきた俳優・小栗旬さん。本作の見どころや役どころ、さらには大河ドラマにかける思いを語る。
※本稿は『Voice』2022年2⽉号より抜粋・編集したものです。
〈聞き手:編集部・中西史也、ヘアメイク:渋谷謙太郎(SUNVALLEY)、スタイリスト:臼井崇(THYMONInc.)、衣装協力:ジョルジオ・アルマーニ・ジャパン株式会社〉
――小栗さんは、2022年1月9日(日)より放送開始予定のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、主人公の北条義時を演じます。本作は平安末期から鎌倉前期を舞台に、鎌倉幕府が成立する過程で繰り広げられる源平合戦や権力闘争を描いています。三谷幸喜さんの脚本を最初に読んだとき、まずは何を感じましたか。
【小栗】ユーモアを含む切り口で鎌倉時代が描かれていて、新しい世界観でしたね。序盤は北条家のホームドラマのような物語で、三谷さんらしいコメディ要素も随所に出てきます。従来の大河ドラマと違う点でいえば、今回の脚本には「ちょっと」という言葉が時折出てくるんです。源頼朝を演じている大泉(洋)さんは「ちょっといいかな」と言うし、僕にも「ちょっと待ってください」という台詞がある。その意味では、大河ドラマとしては珍しい脚本ではないでしょうか。
――大泉さんとの共演はいかがでしたか。
【小栗】大泉さんには、ユーモラスなシーンがちゃんと面白くなっているかどうかを確認してもらったんです。「旬ちゃん、面白かったよ」と言ってもらえたら「これで良いんだ」とほっとしましたね。作品の中身でいえば、頼朝と義時が一緒にお風呂に入るシーンは二人の関係性が表れている場面で、ぜひ注目していただきたいです。
――北条家の家族は義時の父・時政を坂東彌十郎さん、継母・りくを宮沢りえさん、兄・宗時を片岡愛之助さん、姉・政子を小池栄子さん、妹・実衣を宮澤エマさんが演じられるなど、じつにバラエティあふれるキャスト陣ですね。
【小栗】北条家の皆さんとは、撮影を重ねるたびに「家族」としての結束が強まっていきました。父の日には父親役の彌十郎さんに、北条家の皆でワインをプレゼントしたんですよ。とても喜んでくださったのを覚えています。
もちろん、北条家以外にも魅力的なキャラクターがたくさんいますよ。たとえば菅田(将暉)君が演じている源義経は、じつに知的で美しい人物です。義経には「去る者の美学」が込められていて、撮影のときから「カッコイイなあ。羨ましいなあ」と思っていました(笑)。
――あらためて、小栗さんが演じている北条義時とはどのような人物か教えてください。
【小栗】今回の大河ドラマで描かれる義時は、もともと自分の置かれた環境にそれほど不満を抱いていない青年でした。戦には興味がなく、米蔵で米の勘定を楽しむような平凡な人物です。
ところが、源氏・北条家が平家と対立している関係から、義時は次第に権力抗争へと巻き込まれていきます。その後、源頼朝の近くで政治のあり方を学び、やがて計算高くて清濁併せのむ人になっていく。真っ直ぐな性格だった男が、一族を守るために権力に手を染めていくわけです。歴史活劇としては非常に面白いのですが、正直にいえば、少し悲しい気持ちもありますね。
――そんな義時を演じるにあたり、どんな点を意識されましたか。
【小栗】演出の吉田(照幸)さんとも撮影の際に話したのですが、先の展開を見越して演じることはやめようと心がけました。後世を生きる僕たちは史実を知っていますが、当時を生きた人びとはあくまで突発的な出来事に巻き込まれながらも、懸命に生きたわけです。ジャズのセッションのように、その場の空気を大事にしました。義時はとくに周りの人たちに振り回される役なので、その分、先の展開を考えずに演じるのが大変なのですが(苦笑)。
――本作では源平合戦をはじめ合戦シーンも見せ場の一つです。小栗さんはクランクインの際に「いままで出演した大河ドラマのなかでいちばん戦っているかもしれない」とおっしゃっていましたね。
【小栗】そうなんです。初陣では全然戦えていなかった義時が、石橋山の戦いでの敗戦などを経て、徐々に成長していきます。のちに馬に乗りながら弓を射るシーンもあるのですが、かなり練習したのでぜひ期待していただきたいです。
更新:11月23日 00:05