2021年08月04日 公開
――宮坂副知事は都政に参画する前、デジタルプラットフォーマーであるヤフー株式会社の社長や会長を歴任しています。日本最大級のポータルサイトを運営する民間企業から行政へと転身したわけですが、ヤフーと東京都ではデジタルに対する認識にどのような違いがあるでしょうか。
【宮坂】前職では基本的に、デジタルの世界に生きている人たちとばかり関わってきました。言ってしまえば、情報技術の活用など当たり前の話であり、あらためて向き合う必要はほとんどなかった。僕も含め、20世紀最大の発明ともいえるインターネットの世界にどっぷり浸かってきた人間ばかりでしたから。
デジタル産業に限った話ではなく、他業界の民間企業に目を移しても、デジタルテクノロジーをいかに本業に活かせるのか、平成の時代に苦心し続けてきた方は少なくないはずです。
ところが行政は、令和の時代を迎えてもなお、インターネットやコンピュータの技術を使いこなせているとは言い難い。民間企業が平成の時代に着手していたDXという課題に、いまようやく取り組んだ段階だといえます。
――東京都に移られてから、行政のデジタル化の遅れを痛感した具体的な出来事はありますか。
【宮坂】最初に参与として登庁した初日に驚いたのが、自分の仕事部屋にWi-Fiが通っていないこと。あれは衝撃を受けましたね(苦笑)。すぐさま都庁内でのデジタル化を推進して、いまではWi-Fiの利用はもちろんのこと、オンライン会議も当たり前のように実施しています。
民間企業であれば普通のことかもしれませんが、東京都にとっては、コロナ禍前の状況に鑑みれば考えられなかったことです。
僕自身、職員のデジタルへの意識をさらに高めるために働きかけ続けています。たとえば、職員から何か報告を受ける際には、対面ではなくオンライン上で行なうようにと徹底しています。
不慣れな職員からすると話し相手の機微がわかる対面のほうが、説明が手っ取り早く済むケースはあります。しかし、行政サービスの提供元である職員自身がデジタルツールを使いこなせなければ、都民の皆さんに自信をもってサービスを届けることはできないでしょう。
――ほかにはどのようなデジタル改革を進めているのでしょうか。
【宮坂】現在、都庁内で取り組んでいるのが「5つのレス」で、具体的には(1)ペーパーレス、(2)FAXレス、(3)はんこレス、(4)キャッシュレス、(5)タッチレスです。すでに効果は表れてきています。
たとえばFAXレスでいえば、2019年度4月時点と比較して今年同月時点でFAX件数を85.1%削減し、2021年度目標の98%削減の達成が視野に入っています。はんこレス(電子決定率)は今年4月時点で93.5%で、こちらも目標の100%は間近です。
もちろん、コロナ禍によって加速度的に進んだ側面は否めませんが、それも職員の意識の変化がベースにあってこそだと思います。とはいえ、まだ目標が達成できていない以上、着実に取り組みを進めていきます。
更新:11月22日 00:05