2021年07月27日 公開
写真:吉田和本
note株式会社が運営する「note」は、クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿し、ユーザーすなわち読者がそのコンテンツを楽しみ、さらには応援できるメディアプラットフォームだ。2021年3月末時点の会員数は約380万人、累計投稿数は1500万件に達しており、右肩上がりで数字を伸ばし続けている。
誰しもが創作することが可能になった時代におけるクリエイティビティとは何か。数多のコンテンツを創出してきた日本人の強みとは――。前職では書籍編集者として数々のヒットコンテンツを生み出し、現在はnote株式会社のCEOを務める加藤貞顕氏に話を聞いた。【聞き手:Voice編集部(中西史也)】
※本稿は『Voice』2021年8月号より一部抜粋・編集したものです。
――日本はアメリカや中国に比べて、技術やコンテンツへの投資額で引けをとるのが実情です。加藤CEOは光明となる強みをどこに見出しますか。
【加藤】じつは、日本にはコンテンツを生み出す人が非常に多いんです。この事実には、もっと目を向けるべきではないでしょうか。しかも、日本の漫画やアニメが世界に注目されてから始まった話ではありません。
その意味で僕は、日本人には歴史的にクリエイティブな気質があると考えているんです。短歌、俳句、浮世絵、茶道、華道、そして漫画やアニメに至るまで、日本人が発展させてきたコンテンツは数え切れない。
クリエイティブの質は、一定の数がなければ高まりません。裾野があるからこそ天才が生まれるし、全体の質も向上していきます。つまり、日本にはクリエイティビティを向上させる土台があるのです。
ただそれでも、アメリカや中国に予算の面で圧倒されているのは歴然たる事実です。国としての方向性や政策も必要ですが、noteとしてもさらに成長して、引き続きクリエイターを支援していきたいと思います。
――現在はプロのクリエイターだけではなく、誰しもが創作によって生きがいを感じる時代が到来しているように思います。
【加藤】「創作」というとハードルが高いと感じる人がいるかもしれませんが、必ずしも小説を書いたり、noteに投稿したりする必要はありません。たとえば、普段つくる料理の味付けを少し変えることも立派な創作でしょう。
現代人は、仕事以外の時間は基本的に二つの行為をしています。消費と創作です。消費とは、たとえば漫然とテレビを観たり、ただ買い物をするようなこと。創作とは、さきほどの料理の話のように、与えられたコンテンツを享受するだけではなく、能動的に何かを生み出すことです。
前者は「他人のもの」、後者は「自分のもの」ともいえるでしょう。消費と創作のどちらが良い悪いといったものではないと思います。一人の人が両方をするのが普通です。ただ、僕は、創作の割合が大きいほうが人生の幸福度が上がるのではないかと考えています。
創作は骨の折れる作業です。消費だけしていたほうがはるかに楽でしょう。それでも、他人のためにつくられたこの世界で、少しでも自分のためのものを増やしていく。そうした幸せにつながる仕組みを僕たちは整えていきます。
更新:11月24日 00:05