2021年07月22日 公開
写真:吉田和本
note株式会社が運営する「note」は、クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿し、ユーザーすなわち読者がそのコンテンツを楽しみ、さらには応援できるメディアプラットフォームだ。2021年3月末時点の会員数は約380万人、累計投稿数は1500万件に達しており、右肩上がりで数字を伸ばし続けている。
デジタルメディア興隆の時代に、noteはどういう社会をめざすのか。社会問題となっているネット空間での誹謗中傷にいかに対応するのか――。前職では書籍編集者として数々のヒットコンテンツを生み出し、現在はnote株式会社のCEOを務める加藤貞顕氏に話を聞いた。【聞き手:Voice編集部(中西史也)】
※本稿は『Voice』2021年8月号より一部抜粋・編集したものです。
――昨今はソーシャルメディア上での誹謗中傷が社会問題になっています。ネットでの言論が活発化することによる「負の側面」をどう考えますか。
【加藤】まず大前提として、悪質な誹謗中傷は許されるものではありません。そのうえでお話しすれば、ネット空間での「ギスギス感」は、リアルからデジタルへの移行期であるがゆえに起きている側面が強い。
人類の歴史を振り返っても、異なる人種や部族、宗教が交わり合ったとき、多かれ少なかれ軋轢が生じてきましたね。
それまでは自分たちのコミュニティだけで生活を完結させていた人間が、他の世界に住んでいた「他者」と関わり始めれば、摩擦が生まれてしまいます。同様にネット空間も、これほど世界中の人びとが同時につながれば、やはりどうしても、ある程度の摩擦は起きるでしょう。
いまは急速にデジタルが普及している過渡期であり、問題が生じれば一つひとつ対策を考える必要がある。ただし今後、デジタル空間での生活が僕たちにとって当たり前の時代が訪れれば、この状況は改善されていくと考えています。
――noteとしては、誹謗中傷に対して具体的にどのような対策を講じていますか。
【加藤】主に二つあります。一つはnote独自の「コミュニティガイドライン」の提示です。リアル世界の街に条例というルールが存在するように、noteがつくる街にも、一定の決まり事や指針を設けています。
「知識やチャンスを共有する」「ポジティブな話をする」という価値観の共有から、著作権の具体的な知識など、クリエイターが創作を楽しんで互いに敬意を向け合ううえで大事な事柄を示しています。
ガイドラインは現在のものが完成版というわけではなく、ユーザーの声を踏まえて随時アップデートしていくつもりです。
二つ目はテクノロジーの活用です。たとえば、noteで他人の文章にコメントを投稿する前に、ひと呼吸置くことを促す確認画面が出るように設定しています。
ネット炎上の大半は反射的な怒りや感情で生まれており、明確な悪意に基づいていないケースも少なくない。ならば、彼らを最初から排除するのではなく、攻撃的なコメントを踏みとどまらせるための働きかけが必要ではないか。そう考えて、この仕組みをつくりました。
また、ユーザーの画面に表示される記事は、AI(人工知能)のアルゴリズムに基づいてピックアップされています。これはつまり、言論を良し悪しでレイティング(評価)するのではなく、ユーザーがサイトをより便利に使いやすくなるための分類です。明確に規約を違反しているものは別として、「良い言論/悪い言論」は僕たちが判断するべきではありません。
更新:11月22日 00:05