この冷酷な歴史の事実(共産革命は英米の愚かな外交がなければ成就しない)を理解できなかった共産主義思想家は、懸命に、世界に革命が伝播しない理由を考えた。
彼らがたどり着いた結論が、「現代の人間生活のあらゆる側面に支配の網がかけられている。管理社会(既存体制)が人間のあるべき思想を抑圧しているからだ」というものであった。
要するに、「人民の心は既存体制維持に都合の良い伝統文化(キリスト教や仏教に代表される宗教や国柄〈伝統文化〉といった保守思想ファクター)にがんじがらめになっているために、革命がもたらす労働者の享受する真の利益に気づかない。
したがって、彼らの心を『汚しているファクター』は徹底的に排除(破壊)しなくてはならない」(批判理論:critical theory)という考えにたどり着いたのである。
言い換えれば、「既存体制にがんじがらめになっている愚かな一般人を、それに気づいた知識人が啓蒙し、まずは体制を破壊しなくてはならない。既存体制破壊に成功した暁(あかつき)には、知識人(左翼思想家)が愚かな一般人を指導し、共産主義国家を構築する」というのである。
「馬鹿な国民を知識人が前衛となって指導する」という考えは、レーニンの主張に合致する。
伝統的なマルクス主義では、資本家階級と労働者階級の階級対立が煽られた。フランクフルト学派は労働者階級を「少数弱者(被抑圧者)」に、資本家階級を「特権階級(抑圧者)」に置き換えた。これが新しい「階級闘争」の原型となった。
抑圧者グループには、特に白人男性やキリスト教徒などが、被抑圧者グループには少数民族、非キリスト教徒などが「仕分け」された。新階級闘争の旗手として、つまり被抑圧者階級を代表する政党として勢力を拡大したのが米民主党だった。
更新:12月04日 00:05