2021年02月11日 公開
2022年10月20日 更新
「M-1グランプリ」の審査員を務め、“漫才の鉄人”として知られるオール巨人氏。
2020年大会で「漫才の適齢期は40代まで」と語ったことが話題を呼んだが、御年69歳の同氏はなぜ、いまなお現役で舞台に立ち続けるのか。そこには、「上方漫才の宝」と呼ばれた伝説の漫才師やファンとの絆があった――。(聞き手:Voice編集部・中西史也)
※本稿は『Voice』2021年3⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。
――漫才コンテスト「M-1グランプリ2020」の本番中、巨人師匠が「漫才の適齢期は40代まで」と発言したことも話題になりました。あらためて、どういう意味なのか教えてください。
【巨人】僕らが漫才を始めた45年ほど前は、いまとは違って60代で亡くなる芸人も少なくなかった。昭和の芸人は暴飲暴食で遊びが激しかったから、よく肝臓を悪くするんです。だから人生のタイムリミットは、自ずといまよりも短くなる。
あと、たとえば20代のうちに結婚せずに子供もいないと、「僕の嫁さんが……」みたいな家族ネタはしにくいですよね。それから30代、40代と歳を重ねて家族ができれば、ネタの幅は広がっていく。でも50歳を超えてくると、喋るパワーやテンポが落ちてきます。
とはいえ、いまは「人生100年時代」といわれるくらい平均寿命も延びているから、漫才の適齢期も上がってるのかな。かつてだったら漫才をするのは40代までのところが、いまなら50代でも大丈夫かもしれません。
――巨人師匠は御年69歳の現在も、現役で漫才をされています。舞台に立ち続ける理由は何でしょう。
【巨人】本当は50歳までに辞めたいと思うてたんですけど、会社が辞めさせてくれへんし(笑)、まだ僕らの漫才を求めてくれるファンがいますから。来年70歳になる僕らの漫才を劇場で観て、「今日はオール阪神・巨人がいちばん面白かった」と評価してくれる人もいる。
劇場でやる漫才には当然、時間の制約があるから、それに合わせてネタを圧縮する必要があります。これがけっこうしんどい作業なんですよ。「もう体力の限界だから引退します」と宣言してもおかしくない。
でも辞められないのは、僕の尊敬する夢路いとし・喜味こいし先生から「一生、漫才頼むで」と書かれた色紙をもらったのも大きいですね。家の玄関に飾ってあるその色紙を見るたびに、「もう少し頑張らなあかんな」と踏ん張れるんです。
――こうして漫才の「伝統」が脈々と継承されていくのですね。
【巨人】道を切り拓いてくれた先輩方がいたから僕らは漫才ができる、と思っています。先輩方はまるで深い雪山で先陣を切るように道をつくってくださり、僕らはその道を進んでいるだけです。
僕は漫才だけやなしに、ドラマや映画にも出演したことがあるのですが、「俺が良い演技をすれば後輩にも仕事がくるはずや」と意気込んで取り組んでいました。
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更新:11月22日 00:05