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10万円配るのは正解だった?「激論!菅内閣の経済対策」

2020年12月02日 公開
2022年10月27日 更新

高橋洋一(内閣官房参与),田中秀臣(経世済民政策研究会顧問)

 

政府小切手をまくという方法

【高橋】私は、麻生政権のときにうまくできなかったのを知っていたから、「政府小切手を配れ」と言ったんです。ところが、財務省はいろいろな理屈をつけてダメだという。

誤配送のケースが出てくるというんだけれど、誤配送しても、それを別の人が使えるわけじゃない。経済学者もマスコミも、政府小切手について知らないから、そういうことを言うんだよ。政府小切手って、一般的には知られていないんじゃないですか。

【田中】知られてないでしょうね。

【高橋】政府小切手は、署名して銀行に持っていくと換金してくれる。10万円の政府小切手に署名して銀行に持って行くと、銀行で本人確認が行われて、本人と確認されると、現金10万円をもらえる仕組み。

銀行で本人確認するから、誤配送されて別の人の手に渡っても、その人は使えない。かなり、確実な手段なんですよ。

だから私は、冗談みたいな話だけれど、マスクを配るときにその中に10万円分の政府小切手をしのばせろ、と言ったんです。マスクは評判が悪かったみたいだけれど、マスクの中に家族4人分の40万円の現ナマ小切手が入っていたら、マスクをもらった人は大喜びしますよ。

自治体の住民台帳を使わなくても、国が持っている「ねんきん定期便」の宛名などを活用すればできてしまう。そもそも、マスクを全家庭に配れるなら、政府小切手だって配れるでしょう。

【田中】配れますね。

【高橋】日本の多くの経済学者が役に立っていないと私が思うのは、「定額給付金」という言い方しかしなくて、具体的なやり方を言えないところですよ。定額給付金で有効需要というのは簡単な話だけれど、やり方も含めて提言しないと、政策として実行してもらえない。

実行してもらえなければ、経済効果は出ない。カネを配れば経済の落ち込みを抑えられるんだけれど、カネの配り方として、国民に配るのか、企業に配るのか、政府が直接配るのか、地方自治体を経由して配るのか、いろいろなパターンがある。

どれを選ぶかによって大きく違ってくる。できるやり方を言ってあげないと、「できない」と言われて、結局、給付金が配られずに終わってしまう恐れがある。

田中さんたちが提言している2回目の給付金も、できるやり方を言ってあげないと、「できない扱い」にされちゃうし、前回と同じやり方で地方自治体にやらせようとすると、自治体から抵抗される。実行されたとしても、また「2カ月もかかった。配るのが遅すぎる」と批判される。

【田中】政府小切手だと早いということですね。

【高橋】前に私がアメリカにいたときには、政府小切手を配っていた。日本では「政府小切手なんて、やったことがありません」と言って役人が抵抗しますが、海外の人に聞けば、あっさりと「できますよ」と言われると思う。

誤配送もかなりあるけれど、誤配送があっても、宛名と違う人が使おうとすると銀行で換金できないから問題はない。政府小切手なら、2~3週間で各家庭に現金が行き渡ると思う。地方自治体を使うやり方だと、2カ月くらいかかってしまう。

【田中】ただ経世済民政策研究会では、第3次補正予算案での定額給付金の継続には、社会保障の情報基盤を同時に整えるべきである、とも提言しています。

政府小切手を配ることを可能にするのも情報の整備の一貫です。経済政策の理論としては、そもそも需要をつけるだけだから簡単なことなんですけれどね。

【高橋】そうそう。それだけ言うなら簡単。総需要が減るわけだから、金をつけて有効需要を増やせば、それで終わり。「財政負担が大きくなる」と財務省は言うんだけれど、国債が増えても日銀が買うんだから、財政負担は増えない。

日銀も含めた統合政府のバランスシートで見れば、国債を発行して国の負債が増えても、国債を買った日銀の資産が増えるから、統合政府の純債務残高は変わらない。財政負担はないんですよ。

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