2020年09月15日 公開
小説すばる新人賞を史上最年少で受賞し、現在は京都大学に在学する作家・青羽悠さんが今夏、著書『凪(なぎ)に溺れる』(PHP研究所)を上梓した。二作目となる今作で青羽さんは何を描き、訴えたかったのか。執筆するうえで固まった作家としての“覚悟”とは。
※本稿は『Voice』2020年10月号より、一部を抜粋編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也)
――青羽さんが年齢を重ねることで定まってきた作家としての軸とは何でしょう。
【青羽】 僕はこれから何があっても逆説的に生きていくし、そういう作品を書き続けるのだと思います。「世の中は上手くいくことばかりではない。それでも頑張る」というふうに。
ネガティブな状況もすべて受け入れたうえで、前を向いてもがいていく。将来に待っているのは心躍るような希望ではないけれど、光明はある。
そうした意識は諦観にも繋がるし、一作目の『星に願いを、そして手を。』(集英社)と今作の『凪に溺れる』にも共通しています。
――今作のタイトル「凪(風が止み、波が穏やかになること)に溺れる」も、逆説的な言葉ですね。
【青羽】 そうですね。波乱万丈な人生よりも、人生でさしたる大きなことが起きない平穏な暮らしのほうが苦しいのかもしれない。
劇的でないからこそ足をとられる。そんな様子が世の中にあふれていると気付いたんです。
更新:11月22日 00:05