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「NHKの受信料は月200~300円で十分」高橋洋一氏が主張する根拠

2020年06月26日 公開
2020年12月07日 更新

高橋洋一(嘉悦大学教授)

 

NHKの分割民営化

では、どうすべきか。一つの案は、NHKを①「公共放送のNHK」と②「民間放送のNHK」に2分割することです。

これなら肥大化したNHKのスリム化にもなるし、公共放送部分のNHKは、受信料制度によって彼らのいう「社会的使命」を果たすことも可能です。

「偏向」と批判されるような報道ドキュメンタリーや、視聴者全員の納得が得られる保証がない紅白歌合戦や大河ドラマなどの芸能ショーやドラマ、各種スポーツ中継などは民間放送部分のNHKで放送し、同じ土俵で民間放送と競争すればよい。

「NHKを2分割する」という考え方は、公共経済学に基づくものです。

公共経済学は、ある分野への公費支出が正当化されるか否かを考える理論的根拠となるものです。学者の最大公約数的な理解として、文化的な財・サービスは「準公共財」である、とされます。

たとえば、絵画は市場で取引されるので私的財であるといえますが、個人が名画を所有することで作品を見る機会が個人と家族などに限定され、私的便益と社会的便益のあいだに乖離が生じる、ともいえます。

他方で、美術館で作品が一般に公開されて大勢が鑑賞できる機会が設けられれば、両者の乖離はなくなり、絵画は社会的に正当な価値が得られる。こうした対象を「準公共財」といいます。

「準公共財」は価値財(merit goods)ともいわれ、専門家による鑑定など一定の価値判断ならびに社会的判断が求められます。

準公共財の前提は、公費を払う国民が公的支援の必要性について納得することにあります。「表現の自由があるから、どのような内容であれ公費支出を受けられる」という話ではないのです。

じつは、放送にも同じことがいえます。

多くの国民が賛同し、広く便益を与えることが、真に「公共」の名に値する放送です。NHKが「公共放送」の名にどれほど固執したとしても、国民の一部にしか恩恵をもたらさないメディアであれば、受信料というかたちで公費を支出する理由はありません。

公費でなく私費であれば、表現の自由は認められます。受信料で公費を取るから、番組の内容に批判が生じるわけです。

また、広告収入で賄われる「民間放送のNHK」であっても、自分たちが考える「公共性」のある番組を自由に好きなだけ流すことはできます。

それでもどうしても受信料を使いたいのであれば、「公共放送のNHK」として切り離し、アメリカの「非商業教育局」のように教育に特化した番組、あるいは災害情報だけを放送してもらう。

災害報道は国民全員の生命・財産に関わることだし、教育番組は公共経済学の考え方でいえば、国公立大学に公費を支出する外部効果と同じと見なすことができるでしょう。

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