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上陸禁止の「神宿る島」が世界遺産に選ばれた理由

2020年06月12日 公開
2020年11月10日 更新

伊豆美沙子(福岡県宗像市長)

伊豆美沙子

《福岡市と北九州市の中間に位置し、由緒正しき歴史をもつ宗像市。九州本土唯一の女性市長である伊豆美沙子市長は、宗像の歴史の背景には、海に抱く畏敬の念があったという。

「海賊と呼ばれた男」のモデルとなった実業家・出光佐三を生み出し、世界遺産に選ばれたこのまちをどう守っていくのか。(聞き手 Voice編集部・中西史也)》

本稿は月刊誌『Voice』2020年7月号、伊豆美沙子氏の「宗像から第二の出光佐三を生む」より一部抜粋・編集したものです。

 

日本人が抱く海への畏敬

――2017年7月に「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群が世界遺産に登録されるなど、由緒ある宗像の歴史に注目が集まっています。この評価をどう受け止めていますか。

(伊豆)私は当時、福岡県議会議員でしたが、ポーランドのクラクフで開催された世界遺産委員会を傍聴し、世界遺産決定の瞬間に立ち会うことができました。

そこで感じたのは、「目に見えないもの」に対する日本人の感謝の気持ちを世界に認めてもらえた、ということです。海洋国家である日本は海を崇拝し、卓越した航海術を千年以上にわたって継承してきました。日本人が抱く海への畏敬の念が世界に評価されたと考えています。

――そのような宗像の歴史や伝統を次世代に継承するために、どういった取り組みをされていますか。

(伊豆)学校では、ふるさと学習や世界遺産学習を行なっています。といっても、『古事記』に記された歴史や海への畏敬の念を小学生に理解してもらうのは、簡単ではありません。

そこで宗像市では、世界遺産となった沖ノ島を題材にした絵本を制作して市内小学校の一、二年生の教室や図書室、市民図書館に所蔵したり、市民参加型ミュージカル「むなかた三女神記」を上演してきました。

エンターテインメントの力も借りながら、子供が宗像の歴史を自然に感じとっていく。そうして郷土に誇りをもった人びとの思いが継承されていくと思います。

――宗像出身の実業家で出光興産創業者の出光佐三は、宗像大社の再建に尽力しましたね。私財数十億円を投じて神社の復興に乗り出すなど、故郷への並々ならぬ思いを感じます。

(伊豆)出光佐三という人物がいなければ、宗像が世界遺産に選ばれることはなかったでしょう。彼は神社の再建のみならず、『宗像神社史』を編纂し、沖ノ島を学術的に研究しました。

それにより、沖ノ島が「海の正倉院」といわれる所以である祭祀遺物が発見され、国宝に指定されるのです。まさしく出光佐三は、現在の宗像の姿を導いた偉人です。

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