2020年05月20日 公開
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新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、音楽や演劇などのイベントの開催は困難を極めている。大手芸能事務所であり、エンターテインメント事業を手掛けるホリプロの堀義貴社長は、日本と海外の劇場公演システムの違いを指摘。エンタメはどう変わるべきなのか、その覚悟を語る。
本稿は月刊誌『Voice』2020年6月号、堀義貴氏の「エンタメが現場から崩壊しかねない」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也)
――アメリカ・ニューヨークの劇場街ブロードウェイでも、新型コロナの影響で公演は軒並み中止になりました。堀社長はかねてより、公演における日本と海外の手法の違いについて訴えていますね。
【堀】 日本は妙に平等なシステムになっていて、どんな劇場も最大1カ月程度しか借りることができません。
たとえば大勢の観客を収容できる立派な公民館で、集客率が2割しかないイベントがあったとしても、基本的には地域住民優先で会場が確保できます。一方で、満員を見込める作品であっても、その扱いは同様です。
劇場の稼働率が人びとのニーズに合っていない会場がわれわれの税金で支えられていることを、多くの人は意識されていないと思います。
コロナの影響で公演が延期や中止になった場合、同じ演目を実施できるのは数年後になってしまいます。しかも東京五輪・パラリンピックが延期になったことで、会場の確保はさらに困難を極めるでしょう。
一方で、ロンドンのウエスト・エンドやニューヨークのブロードウェイは、作品の人気次第でロングランが可能です。そのため公演が再開できれば、長期的に見れば資金を回収する余地があります。
日本の劇場利用を世の中のニーズに合わせて効率化できるよう、その仕組みを再考するべきです。
――今回の危機を乗り切ったあとも、やはり舞台公演やイベントを中心に事業を展開していくことになるでしょうか。
【堀】 もちろんです。演劇というと、日本では儲からないと思っている人が多い気がします。でも、ニューヨークやロンドン、それに韓国では「金のなる木」なわけです。
たとえば皆さんご存知の『ライオン・キング』(ディズニーによる長編アニメーション映画)は、1994年に全米で公開されて以降、音楽やミュージカルに形を変えて、四半世紀以上も同じソフトを使っています。
『ライオン・キング』という1つのコンテンツで、これまでの累計売り上げはじつに2兆2000億円。ミュージカルだけでもおよそ7000億円です。
一方、日本のアニメ産業全体の市場規模は2兆円程度で、『ライオン・キング』一作品にも及びません。アニメといえば「クール・ジャパン」というイメージがあるかもしれませんが、まだまだマーケットが小さすぎるのが現状です。
更新:11月21日 00:05