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「街から人が消えた…」バルセロナで「ロックダウン」を強いられたジャーナリスト

2020年05月13日 公開
2020年07月09日 更新

宮下洋一(ジャーナリスト)

医療崩壊の渦中に

私は、3日に1回、1時間ほど外出し、買い出しに行くようになった。最初のころは、スーパーの袋を囮として持ち、散歩をしていた。ある日、後ろから警察に呼び止められた。

「ここで何をしているの? どこから歩いてきたの? スーパーには1人で行ってください。違反すれば600ユーロ(約7万2000円)になりますよ」

都市封鎖を行なったところで、スペイン人はいずれ街に繰り出すに違いないと思っていた。青空と太陽と海が大好きな国民が、自宅待機でじっとしているはずはないと思っていた。

だが、この考えは完全に私の誤解だった。

夜8時になると、国民は自宅のベランダや窓から、盛大な拍手を送った。生死の現場を行き交う医療従事者への激励で、1日も欠かすことなく称賛のメッセージを送り続けた。

この行為はスペインの伝統だが、怒りを表明するときは、「カセロラーダ」と呼ばれる「鍋叩き」を行なう。

3月24日、非常事態宣言から10日。死者は累計で136人から2696人まで増加し、感染者は5753人から3万9673人まで急増した。

シーズン中だったサッカーのリーグ戦も、無期限での延期を発表。コンサートやフェスティバルも、すべて中止になった。

国際通貨基金(IMF)は、2008年の金融恐慌と同レベルか、それを超える危機に突入すると予測した。

マドリードの病院では、すでに患者を収容するスペースも医療器具も足りない状況に陥っていた。まさに医療崩壊の渦中にあった。

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