2020年04月22日 公開
2024年12月16日 更新
新型コロナウイルスで揺れる日本列島。街中を走り抜けるUBER EATSをよく見かけるようになった。「デジタル先進国」と呼ばれる中国にも、フードデリバリーサーバスは活況と聞く。はたして、その実態はどうなのか。
*本稿は、『ルポ デジタルチャイナ体験記』 (PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。
シェアサイクルや配車アプリと並んで、近年の中国人のライフスタイルを変えたのが、フードデリバリーサービスだ。要するに、ランチやディナーの出前である。
日本ではウーバーイーツが都市部を中心に広がりを見せているが、中国では人件費の安さなどから、極めて手軽にフードデリバリーが使われている。
業者はアリババが買収した「餓了么」と、テンセントから出資を受けている「美団外売」が市場を二分している。企業カラーは餓了么がブルー、美団外売がイエローで、中国の街中は青色と黄色の電動バイクがあちこちを走り回っている。
餓了么のアプリを開くと、「グルメ」「ハンバーガー」「朝食」「フルーツ」などのフード系のボタンのほかに、「スーパー・コンビニ」「ドラッグストア」「代理購入」などのボタンもあった。ネットスーパーに対抗して、ジャンルを広げているのだ。
「代理購入」をクリックすると、メッセージを書き込む画面に切り替わり、「買ってきて欲しいものを書いてください」とある。欲しいものの写真もアップロードできるので、たとえばタバコの箱などをアップして買ってきてもらうこともできそうだ。食べ物に限らず、どんなものでも買ってきてもらえるので、風邪で寝込んでいる時なども重宝しそう。
無数のレストランページを眺めてみると、所要時間の目安も書いてあり、多くは30~40分間ほど。麻婆豆腐やタケノコ炒め等が組み合わさった中華弁当をチョイスし、注文した。弁当32元(512円)、容器代2元(32円)、配達料5・3元(約85円)で、合計39・3元(約630円)になった。
容器代と配達料は合計117円ほどだが、日本との物価差を考慮すると、200~300円ぐらいの感覚だろうか。それでも安い。料金はやはりアリペイまたはウィーチャットペイで支払う。
注文から15 分ほど経過したところで、「配達を開始しました」とのメッセージがアプリに表示され、地図上を配達員のアイコンが移動し始めた。第3章で紹介したネットスーパー同様に、ドライバーの現在地がリアルタイムに把握できるのは、非常に安心する。
ドライバーの簡単なプロフィールも記載されており、氏名のほか「定時配達率」「プラスレビュー率」「1日の平均配達数」などが書いてある。
「ドライバーにチップを渡す」という機能もあり、2元(32円)、5元(80円)、10元(160円)、その他の金額を選べる。それぞれペットボトルの水、棒付きアイス、スイカのイラストが描かれ、現金の生々しさをソフトにしていた。
ドライバーとはチャットや通話で連絡できるので、チップを活用したら優先的に持ってきてもらうなどのサービスもお願いできるだろう。
注文から約30分後、部屋をノックする音とスマホの着信音が同時に聞こえ、玄関に出ると、若い男性が無言でビニール袋を突き出してきた。「どうも」と言って受け取ると、「はい」と言って足早に去って行った。ネットスーパーのときもそうだったが、中国の配達員は愛想に欠けるものの、行動に無駄がない。
更新:12月27日 00:05