2020年02月14日 公開
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2020年、アメリカ・イラン両国の関係が緊張状態を迎え、世界は「ここで次の戦争が起きるのか」と震撼した。日本でも連日メディアで報道がなされていたので、ご存じの方も多いだろう。
緊迫する両国の外交関係について、共同通信特別編集委員を務める杉田弘毅氏が解説する。
本稿は月刊誌『Voice』2020年3月号、杉田弘毅氏の「米・イランは再び衝突する」より一部抜粋・編集したものです。
2020年は戦争一歩手前の危機で始まった。米軍によるイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害とイランの報復攻撃、そしてウクライナ旅客機の誤撃墜という緊迫の1週間に、世界は「次の戦争はここで起きるのか」と震撼した。
11月の米大統領選は、イラン危機を受けて米軍の最高司令官であるトランプ大統領の外交・安全保障政策のかじ取りが争点に浮上している。安定しない対外政策こそが、民主党が標的として狙い、共和党内でも不満が漏れるトランプ氏のアキレス腱であるからだ。
外交は票にならないと、景気や医療、犯罪対策が争点となってきた過去の大統領選とは打って変わった風景だ。
選挙戦が不利に展開した場合に、トランプ氏がイランの挑発に対して軍事的な賭けに出るシナリオも十分検討しておくべきだろう。
ソレイマニ司令官殺害の3週間前、ペルシャ湾を挟んでイランと向き合うカタールの首都ドーハに、米国の大型代表団が降り立った。
トランプ氏の娘イバンカ大統領補佐官、ムニューシン財務長官、フック・イラン担当特別代表、そしてトランプ氏の盟友グラム上院議員である。
ドーハで毎年開かれる有識者対話「ドーハ・フォーラム」への参加が目的だ。このフォーラムは毎年開かれているが、前回は国務省のテロ対策特使が最高位の米参加者だったから、大幅な格上げである。
カタールは親イラン政策などを理由にサウジアラビアから断交の制裁を受け、トランプ氏はサウジに歩調を合わせてきた。だが、娘のイバンカ氏を含めた大型代表団の派遣は、カタール重視への転換を意味する。
フォーラムにはイランからザリフ外相も出席し、演説した。イランはアラブ諸国のなかではカタールと仲が良い。
フォーラムでは米・イランの接触こそなかったものの、カタールを仲介とする両国の対話が近くスタートするのではないか、という憶測が生まれた。
同フォーラムに参加していた筆者は、カタールのアティーヤ副首相兼防衛担当国務相にインタビューした。すると、「米国はカタールの役割にようやく気付いた」と喜んだ。
ロウハニ・イラン大統領の訪日(2019年12月20日)直前だったこともあり、「カタールも日本も、どちらの立場にも立たないから、橋渡し役を果たせるはずだ」と協力を呼びかけていた。
だが、そうした淡い期待は米軍のソレイマニ司令官殺害で消し飛んだ。
更新:11月23日 00:05