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噂される「中国の銀行の日本参入」 問題山積の“紅船”とどう付き合うべきか?

2019年12月25日 公開
2020年01月03日 更新

柴田聡(金融庁総合政策局総務課長兼中国カントリーディレクター)

中国金融の驚くべき進化と弱点

2016年に世界最大となった中国の銀行市場。シャドーバンキングの資産規模は約900兆円、超富裕層の資産は2300兆円は日本の約1.3倍。

個人間決済ではフィンテックの一大先進国にシイ調子、膨大な人口を背景とした巨大市場を世界各国の金融機関も虎視眈々と狙っている。急成長を遂げる中国の巨大金融市場と日本はいかに付き合うべきか。

金融庁総合政策局総務課長で中国カントリーディレクターの柴田聡氏は、著書『中国金融の実力と日本の戦略』にて、中国金融を把握するためには「リスクも正しく認識する必要がある」と述べている。ここでは同書より、日中両国の金融市場の今後に触れた一節を紹介する。

※本稿は柴田聡著『中国金融の実力と日本の戦略』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです

 

日本と比べて…急激に進化してしまった中国のフィンテック

2017年夏、5年ぶりに訪問した北京で私は大きな衝撃を受けた。少し見ない間に、中国で「金融革命」が起きていたからだ。

筆者は、2008年夏から2012年夏までの4年間、財務省からの派遣で北京の日本国大使館に勤務したが、当時は見たこともなかったスマホ決済が、わずか数年のうちに独自の著しい発展を遂げていた。

首都北京においては、ほぼ完璧なキャッシュレス社会が実現されていた。コンビニ、レストランは言うに及ばず、露天の屋台、レンタル自転車、果ては交差点の物乞いに至るまで、隅々までQRコードによるスマホ決済が定着している。

日本人駐在員は、スマホ決済で宴会の割り勘を清算している。それを使えない日本からの出張者は中国人店員から敬遠され、クレジットカードはおろか、現金すら使うのが気まずい雰囲気が漂う。

現地駐在の同僚に、スマホアプリの支付宝(アリペイ)や微信支付(ウィーチャットペイ)を見せてもらうと、かつてはサービスが悪いことで定評のあった中国国有銀行の銀行口座とも連結され、決済や送金はもちろん、さまざまな金融取引がスマホで簡単に処理できる。

いつの間にか、中国はフィンテック先進国とも言える目覚ましい発展を遂げていた。残念ながら、個人間決済については日本よりはるかに先行していることは明らかだった。

中国フィンテックの劇的な発展を目の当たりにし、筆者は浦島太郎の気分を味わっていた。

自分の想像をはるかに超えた、中国の凄まじい成長と変化の速さにショックを受けると同時に、人口減や低金利等で収益悪化にあえぐ日本の国内金融の在り方を「外の目」から問い直す機会ともなった。

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