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英国が「日英同盟」復活を急ぐ理由

2019年10月16日 公開
2024年12月16日 更新

岡部伸(産経新聞社論説委員/前ロンドン支局長)

岡部伸※写真はイメージです。

欧州連合(EU)から離脱した英国とEUの交渉はコロナ禍を経て本格的な交渉が再開された。両者ともに「合意なき離脱」を回避しようと悪戦苦闘しているが、EUから抜けた後、英国はどうするつもりなのか。

参考になるのが、メイ前首相が2016年6月の国民投票から4カ月後、同年10月の保守党大会で掲げた「グローバル・ブリテン」構想である。EU離脱後の新たな経済、外交、軍事的な戦略として、インド洋から太平洋へと進出する構想で、EU離脱によって低下すると予想される英国の国力を維持するための方策でもある。そのパートナーとして英国がとくに期待するのが、日本である。

※本稿は、岡部伸著『イギリスの失敗』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。

 

英国主導による復活

17年8月30日、アジア諸国へ歴訪するのではなく、安倍晋三首相と会談する目的だけで日本を訪問したメイ前首相は、日本を「アジアの最大のパートナーで、like - minded(同士)の国」と評した。

英国人が「like - minded の国」という表現を使うのは、オーストラリアやニュージーランド、カナダなど、英連邦の中でも英国と関係が深い「兄弟国」に対してだけだ。メイ前首相が日本を「like - minded の国」と呼んだことは異例だった。

その言葉通り、両首脳は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、日本と英国の安全保障協力を新段階に押し上げ、日英関係をパートナーの段階から「同盟」の関係に発展させることを宣言した。

さらに、メイ前首相は「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンに基づいて」、英国がグローバルパワーとして日本との同盟関係を活用し、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にした。

日英が互いを「同盟国」と公式に呼び合ったのは、1923年に日英同盟が破棄されて以来、初めてのことだった。

すでに英政府は、2015年の国家安全保障戦略で、戦後初めて日本を「同盟」と明記した。日英関係を「同盟」という言葉を使って表現し始めたのは、英国側が先である。

つまり日本側ではなく、英国主導で「日英同盟」が復活されたことを明記したい。

国民投票直後の16年8月に上梓した拙著『イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭』(PHP新書)で、筆者は日英関係を発展させ、「日英同盟」の復活を目指せと主張した。その後、この21世紀に新たな日英同盟へと進化させる時代が来ていることは喜ばしい。

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