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竹田恒泰「日本に一党独裁や専制君主は適さない」

2019年03月26日 公開
2022年10月27日 更新

竹田恒泰(作家/慶應義塾大学講師)

日本人は高度な民主主義を実現できる可能性を秘めている

では民主主義は駄目かといえば、そうでもない。

日本にとって、一党独裁や専制君主が馴染まない以上、民主主義しかない。であれば、私たちは「どうしたら民主主義がうまく機能するか」を考えなければいけないのではないか。

幸い長い日本の歴史において、専制を良しとする価値観はない。むしろ、大人数で話し合いをして最良の結果を得ることを美徳としてきた。日本が二千年以上国民に守られて存続してきた一つの理由は、そこにあるのではなかろうか。

『古事記』では、何か問題が起きるたびに八百万の神が相談して物事を決めていたし、聖徳太子の「十七条憲法」には役人の心得として「夫事独り断むべからず。必ず衆とともに論あげつらふべし」と明記されているほか、明治天皇が発せられた「五箇条の御誓文」の冒頭にも「広ク会議ヲ興シ 万機公論ニ決スベシ」と書かれている。

このように、独裁がいかに慎むべきものであるかは、歴史上、繰り返し戒められてきた。

民主主義は終戦後に占領軍によって持ち込まれたのではない。

たしかに、戦後民主主義は発展した。だが、かつては不十分ながらも民主主義は確実に存在し、国会や選挙などがなくとも、国民本位の政治を行なうことが是とされてきた。

明治維新の文明開化と先の大戦の終結の二回の機会に、従来日本にあった日本型民主主義と、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に端を発する西洋型民主主義が「出会った」と見るのが正当ではないかと思う。

日本人は排他的な価値観を持たない。古代には大陸や半島から、また幕末以降は西洋から積極的に文化を取り入れてきた。外国のものでも良いものは取り入れ、それをさらに改良し発展させていくのが日本の強みでもある。

西洋型民主主義にも学び取るべきことは多々あるが、とても闘争的で、故に多くの問題を抱えているのもまた事実である。また独裁を嫌い話し合いを是とする日本の民主主義も、西洋から憲法・議会・選挙などを導入することでさらに発展したのもまた事実である。

近年の日本の民主主義がおかしくなっているのは、極めて闘争的な西洋型民主主義の悪い側面が全面に現れた結果ではないだろうか。

西洋型民主主義の負の側面と、日本型民主主義の優れた側面の両方を知ることで、私たちは民主主義を正しく機能させていくことができるようになるはずである。

それにより、はじめて日本型民主主義と西洋型民主主義が「出会った」価値があるといえよう。近年の国会は目も当てられない状態だが、私たち日本人は、世界最先端の高度な民主主義を実現できる可能性を秘めているのではないか。

これは最早憲法の条文の問題ではない。民主主義が正しく機能するかどうかは、有権者一人ひとりの意識の問題にほかならない。

 

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