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日大タックル事件と福知山線脱線事故は同じ構造?『軌道』著者が語る「失敗の本質」

2019年01月09日 公開
2019年04月20日 更新

松本創(ノンフィクションライター)

松本創『軌道』聞き手:編集部(中西史也)

 

「理」を貫いた一人の事故遺族

――平成17年(2005年)4月25日朝、西日本旅客鉄道株式会社(以下JR西日本)の福知山線、塚口駅・尼崎駅間で起きた大規模脱線事故。死亡者は運転士を含む107名、負傷者は562名に上り、戦後の鉄道事故で4番目に犠牲者の多い事故でした。

本書『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』は、自身も被害者遺族であり、都市計画コンサルタントとして加害企業のJR西日本に原因究明を迫った淺野弥三一氏の視点から描かれています。彼に焦点を当てた理由は何でしょうか。

【松本】 事故から数年経った2012年の春ごろ、淺野さんから「事故後にやってきたことを客観的な記録として残したい」と聞いたのが、直接のきっかけです。

淺野さんとは、私の新聞記者時代に彼が支援していた尼崎公害訴訟関連の取材で知り合い、その後、彼の事務所が取り組む尼崎再生のまちづくりに関わるようになって、よく事務所に出入りしていました。

脱線事故の当日、淺野さんの奥さんが巻き込まれたと聞いたときは、ただ絶句するばかりでしたが、これだけの大規模列車事故と、その後の闘いの記録は誰かが残しておかないといけない。

その役目を自ら背負ったのは、淺野さんから託された思いに応えねばならない、それが自分の責務だと考えるようになったからです。

――松本さんから見て、淺野氏はどのような人物でしょうか。

【松本】 ひと言でいえば、強固な「個」の意思をもって、技術屋としての「理」を貫いた人。事故以前から災害や公害の現場に軸足を置き、生き方に筋が通っていました。

一方で、事故遺族として埋められない喪失感を抱きながら、それをうまく表現できない不器用さもある。

遺族感情を横に置き、「JR西日本を真に安全な企業に生まれ変わらせよう」と、遺族と同社幹部らによる異例の共同検証を実現させるわけですが、そのようなかたちで技術屋の信念と矜持を貫くことが、彼自身にとって「生きる」ことだったのではないでしょうか。

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