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ハコモノ改革最前線~カギを握る2つの連携~

2012年01月23日 公開
2023年09月15日 更新

佐々木陽一(政策シンクタンクPHP総研主任研究員)

 横浜市が公共施設の見直しに動き始めた。昨年11月には、筆者も加わった市の有識者会議「公共施設のあり方検討委員会」(以下、委員会)が市営プール、野外施設等について、「施設の選択と集中を図ることが必要」とする『意見書』をまとめた。膨大な維持費用に耐えきれず、施設の見直しにようやく踏み出した格好だが、行政内部の実行体制の整備、市民の理解と協力をいかに得るかなど、残された課題は多い。

 国内最大368万人の人口を擁する横浜市が保有する公共施設は、数にして約2,300。それらに要する保全費はH23~40年度に計約1.5兆円と桁違いだ。このうち今回、委員会で検討対象にした市営プールだけでも、市内に550ヶ所(そのうち、学校プールが500ヶ所)もあり、1年間で約16億円の維持費と約7億円の保全費がかかっている。加えて、予算不足で過去10年間手当てできなかった保全費も約46億円に上る。こうした巨額の維持保全費用を賄うには、公共施設を削減するなど市民の痛みを伴う対応も考えざるを得ない。

 だが、単純な財政難を理由とする施設減らしでは、市民の反発は必至だ。「意見書」に対するパブリックコメントでは、「廃止議論の前に、市職員の人件費や議会の無駄を削るべきだ」という市民意見も寄せられている。住民サービスの低下を抑えながら、将来にツケを回さぬ施設減らしをどのように進めれば良いのか。

 1つは、施設所管部局の連携である。維持困難なほどプールが増えてしまった原因の1つはタテ割り行政にある。磯子区には、半径900mほどの範囲内に3つの市営プールが立地する地区もある。このような状況を生んだのは、プールの所管が、市民局(公園プール)・環境創造局(温水プール)・教育委員会事務局(学校プール)に分かれていることに原因があるのは間違いない。今後は、首長と各部局長からなり具体策の決定権限を有する会議や、首長直轄部局の創設など、公共施設の再配置機能が働く庁内体制の構築が必要であろう。

 もう1つは、行政と市民との連携である。たしかに、行政の無駄を放置したまま施設を統廃合することは筋違いである。だが、あえて統廃合を含む公共施設の総量削減を進めるべき、と委員会が指摘しているのは、行政が市民に痛みを伴う見直しよりも具体的かつ説得力を持った見直しのシナリオを提示しない限り、実は、知恵もなく公共施設の問題を先送りし続けてしまうことを危惧しているからだ。施設の削減なしの政策が提示され、それが実現可能であることに越したことはない。しかし、現有施設をそのまま維持しようとすると試算上、市民1人当たり2万円以上の負担が今後18年間にわたって続くことになる。物理的には公共施設の数を減らさなければ財源不足が生じて結局、市民負担を増やさざるを得ないのである。両者のトレードオフの関係を提示して、逆に市民とともに施設のあり方を問い直す。そうした市民との連携が行政には求められる。

(2012年1月23日掲載。*無断転載禁止)

 

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