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大阪都の成否を占う大阪市の区長公募

2012年01月16日 公開
2023年09月15日 更新

荒田英知(政策シンクタンクPHP総研地域経営研究センター長)

大阪都構想はなぜ嫌われるのか

地方自治をめぐる今年最大の話題は、大阪府と大阪市を統合する「大阪都構想」の帰趨であることに異論は少ないだろう。12月19日に大阪市長に就任した橋下徹氏は、27日に「府市統合本部」を発足。当日の会議で示したロードマップでは、4月に大阪府市と堺市による協議会を立ち上げ、秋には共同案を取りまとめて国に法改正を求め、住民投票などをへて2015年には都政移行を目指すとした。

大阪都構想の背景には、府県と政令指定都市の二重行政問題がある。政令指定都市は府県と同格とされるが、両者の役割分担を整理しきれず、施設や施策の重複が指摘されてきた。大阪では弊害が顕著であるとされる。その打開策として橋下氏が掲げたのが大阪都構想で、府県と市町村が一体化した東京都区制度をモデルにしようとするものである。

大阪市と東京都には、それぞれ24と23の「区」がある。しかし、地方自治体としての位置づけは全くの別物である。東京特別区は市町村と同じ基礎自治体とされるのに対して、政令指定都市である大阪市の区は市役所の出先機関に過ぎない。東京特別区の区長が選挙で選ばれるのに対して、大阪市の区長は市役所の職員である。

橋下氏は、現行の大阪市24区を8~9区に統合して東京特別区にならった特別自治区とし、区長も公選するとしている。その実現に先立って、就任と同時に24区長の公募をスタートした。募集要綱には「現在の区長よりも権限を強化し、一般職のトップである局長級のさらに上位職として、市長に次ぐ職責を担う」と説明されている。

応募に際しては、区の課題を分析し、財源の裏づけもある「区長マニフェスト」の作成が求められた。高いハードルと考えられるが、1月11日の締切りまでに全国から700人を超える多数の応募者があったと報じられている。また、現職区長のうち18人も応募したとのことだ。今後、就任に向けて選考が進められ、4月から4年間の任期が始まる。

橋下市長は、すでに公募区長に対して就任後の課題を用意している。それは「区割り案」の作成である。大阪都構想では大阪市域に8~9の特別自治区を置くことを想定しており、現行24区の再編が必要になる。その案を公募区長に求めるというのだ。基本的には地理的なつながりが重視されることになろうが、実はここに大阪都構想の悩ましさがある。それは各区の税収格差である。

特別自治区がどれだけの役割を担うことができるかはその税収に左右される。富裕区なら多くの役割を担えるが、それでは貧乏区で財源が賄えない。貧乏区に合わせれば区の役割が限定され分権の理念に逆行する。ここにどのような財政調整を行なうかが大阪都の成否を左右する。東京都区制度でも、各区の税収格差を調整するために、市町村税の一部を都が徴収し各区に配分しているが、区の自立性を損ねているとの批判も根強い。

税収の平準化のみを目的とするなら、富裕区と貧乏区を合わせた「飛び区」が出てきてもおかしくない。地域の一体性と財政力を両立させる区割り案の作成は存外難問なのである。公募区長が橋下市長の期待に応えられるかどうか、大阪都の成否を占う試金石の一つとなるであろう。

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