2018年02月16日 公開
2018年02月16日 更新
2017年8月23日、北朝鮮メディアの『労働新聞』が「国防科学院・化学材料研究所」を訪問する金正恩の写真を掲載した。そこには、弾道ミサイルの固体燃料を収納するための炭素繊維で製造されたと思われる大型の軽量型ケースが展示されていた。新型弾道ミサイル「北極星1号」や「北極星2号」で使用される可能性が指摘されている。
映像のなかで技術者と談笑する金正恩の前には「超低温恒温槽」という環境試験機が設置されていた。超低温の気象環境ストレスなどが、ミサイルの素材に与える影響を試験していたものと思われる。この恒温槽は、日本企業が製造していた一世代前のモデルに酷似している。北朝鮮はいかにしてこのような製品の情報を収集し、調達したのだろうか。
欧州の情報当局筋によると、寧辺の原子力施設でも、日本製の周波数変換器や非常用発電設備などが使用されているという。かつて北朝鮮の武器密輸企業がシリアの弾道ミサイル関連組織に向けて密輸していた貨物から、日本製の携行型圧力計測器が見つかったこともある。北朝鮮の偵察総局の無人偵察機には日本製カメラが、そして朝鮮人民軍の艦船には日本製レーダーが標準装備されている。
北朝鮮では、軍事分野でも日本製品は人気が高い。そして、日本国内の協力者なしでは、北朝鮮がそれらを調達することも容易ではなかろう。
国連での捜査を通じて、私は日本国内の協力者の存在にたびたび出くわす場面に遭遇した(詳細は拙著『北朝鮮核の資金源「国連捜査」秘録』〈新潮社〉を参照)。
・東京都内のある日本企業の代表者は、かつて北朝鮮に核関連物資を迂回輸出して、逮捕・起訴・有罪判決を受けたあとも、経由地を変えて北朝鮮の武器密輸企業の関係者との取引を継続していた。
・福岡県内の海運会社の代表者は、知ってか知らずか、北朝鮮の密輸ネットワークに属する中国人と共同で、香港企業を経営・所有していたこともある。
・国連制裁対象となった北朝鮮最大の海運会社のグローバル・ネットワークの中核にいたのは、東京都内で会社を経営する日本人だった。
・日本国内の北朝鮮関係団体の技術者チームが、東京都内で開催された国際展示会で、世界でも最先端の工作機械に関わる情報を収集していた。
残念ながら、日本の国内法の不備もあり、これらのほとんどが日本国内では事件化されていない。もちろん摘発もされていない。そのためには、新規立法や法改正などの措置が必要になるはずだが、日本政府はそこまでして国連制裁を徹底するつもりはないようだ。
また、日本政府によれば、「在日外国人の核・ミサイル技術者」すら存在するという。北朝鮮を訪問しない限り、彼らは自由に日本からの出入国を認められているというのも、私には驚きだ。国連安保理決議では、このような人物の海外渡航は全面的に禁止されているのだが、日本国内では問題視されていない。
(本記事は『Voice』2018年3月号、古川勝久氏の「対北制裁網は抜け穴だらけ」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の3月号をご覧ください)
更新:11月25日 00:05