2011年11月02日 公開
2023年09月15日 更新
11月上旬に、復興庁設置法案が臨時国会に提出される見込みである。この法案が成立すれば、来春にも復興庁が創設される。復興庁は東日本大震災における復興政策の司令塔として十分な機能を果たせるだろうか。率直な感想をいえば、復興庁には、所掌事務や組織体制について問題が残されており、あまり大きな期待はできない。
復興庁は東日本大震災復興対策本部や現地対策本部、復興構想会議などの現行組織を引き継ぎ、復興大臣が事務を総括することになっている。また、総理が組織の長になり、復興庁は各省への勧告権を有するようになる。この組織体制には、各省よりも復興庁を一段高く位置づけ、復興庁主導で政策を実施するねらいがあると思われる。
ところが、直接的な政策実施の権限は復興庁に与えられていない。復興庁は各省庁へ勧告を行うことができても、各省庁がそれに従って政策を実施する保証はない。所掌事務には、基本方針の企画立案や復興特別区域の認定・交付金配分、省庁間の政策調整などがあるが、復興庁は復興事業を主体的に行えないのである。
復興庁に当初期待されたのは、迅速に復興政策を行うために、各省庁の権限・財源・人材などを結集させることであった。そうならなかった背景には、各省庁が所管権限等を復興庁に移管することに対して、消極的であったことが考えられる。また、民主党が復興庁設置に前向きでなかったことも影響しているかもしれない。
さらに、復興庁は被災地である岩手県、宮城県、福島県に出先機関として復興局を設置することで、被災地情報を早期に把握し、的確な政策立案を行おうとしている。しかし、このような中央集権的組織が果たして機能するだろうか。被災地情報に基づいた効果的政策を行うならば、各省庁や出先機関から権限や財源等を被災自治体に移譲させるべきである。これにより、各自治体は被災者の声を踏まえた政策対応を柔軟に行えるようになる。民主党政権は行政の中央集権体制を見直すため、地域主権改革として国の出先機関の原則廃止に取り組んできた。先日、野田総理は国の出先機関改革法案を来年の通常国会に提出する方針を示したばかりである。復興局設置は地域主権改革と矛盾することにもなる。
今回の復興庁で最も注目すべき点は、10年という復興期間にあわせて設置期限が設けられることである。こうした時限措置の設定は、省庁数増加による財政支出の拡大を抑制するためと考えられる。もっとも、被災地の復興が10年で完了するとは限らない。復興特別区域の認定や交付金配分には、原発災害からの復興支援も含まれる。原発の廃炉には約30年を要するといわれ、原発周辺地域の復興事業は長期に及ぶと予想される。復興庁についても10年以上の設置が被災地などから望まれるかもしれない。設置期限を設けたとしても、当初の予定通りに復興庁を廃止するのは容易ではない。設置期間については、今後も慎重な検討を要すると思われる。
復興庁のように、中央集権的でありながら、中途半端な権限しかもたない組織が、効率的で効果的に政策を実施できるはずがない。しかも、その復興庁が長期にわたって設置される可能性は高く、財政への負荷が懸念される。政府は、被災地の状況に応じて復興庁のあり方を抜本的に見直していく必要がある。
(2011年11月2日掲載。*無断転載禁止)
更新:11月22日 00:05