2017年05月16日 公開
2017年05月17日 更新
2016年10月、厚生労働省は「受動喫煙防止対策の強化について(たたき台)」を発表した。たたき台に書かれた喫煙規制や罰則が仮に実現した場合、外食市場に与える影響はどのくらいか。総合マーケティングビジネス企業の富士経済が試算を行なっている。
結果は「居酒屋、バー・スナック」の受ける影響がマイナス6554億円、「カフェ・喫茶」はマイナス1173億円、「レストラン」はマイナス674億円。計8401億円の損失だという。注目すべきは居酒屋などでは喫煙者の割合が高く、過半数(53・8%)がたばこを吸う客という点である。店舗面積は50㎡未満が71%と小規模店が多く、個人経営や小面積の店では喫煙室をつくるスペースがない。全面禁煙にした場合、常連客を失うという飲食店の懸念を裏付けている。また月商200万円未満の店舗が54・1%であり、喫煙室を設置する費用負担に耐えられないことが予想される。
他方、厚生労働省の「受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)」を見ると、驚いたことに「飲食店のうち、小規模(●㎡以下)のバー、スナック等(主に酒類を提供するものに限る)は、喫煙禁止場所としない」(2017年3月1日発表、同前)と面積が●の伏せ字になっている(同年4月中旬現在)。これはあまりにいい加減ではないだろうか。とりあえず全面禁煙を決めてしまってから、詳細はあとで、という本心を地で行く文言である。小規模店舗の定義など彼らにとってはどうでもよく、とにかく全面禁煙を強制できればOKなのだろう。喫煙撲滅に拘泥するあまり、飲食業に携わる人びとの思いを置き去りにしているのではないか。
「巷では30㎡以下が条件という話もありますが、30㎡といったら約10坪。厨房まで入れるとありえない狭さで、実質的には全面禁煙と同じ。厚生労働省の案は机上の空論にすぎない。現に2010年、神奈川で受動喫煙に関する条例(神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例)が施行されました。ところが分煙と全面禁煙を選択するなかで、全面禁煙を選んだ店はほぼ皆無。厚労省は受動喫煙防止法による飲食店の経営的ダメージはない、と主張していますが、経営者は実際に全面禁煙にしたら、お客さんが来なくなることをよく知っているわけです」(神谷氏)
更新:11月23日 00:05