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クレア・レポード フクシマの風評被害を止めたい

2017年03月10日 公開
2017年05月09日 更新

クレア・レポード(エジンバラ大学大学院生) 

福島こそ日本の原風景にふさわしい

 ――ところで、当初日本に移住したときから2年が経ちますが、福島での生活はいかがでしたか?

 クレア 福島は食材が豊富で、何を食べてもおいしいですね。近海で獲れるマグロや、牛乳やアイスクリーム等の乳製品がお気に入りです。あと忘れてはいけないのは、福島産の桃です。アメリカやイギリスでも、こんなに大きくて甘い桃に出合ったことがありません。

 ――福島に魅力を感じるものは、ほかにありますか。

 クレア 風光明媚な土地の景色です。先日、スコットランドに戻ったときに、映画『君の名は。』を観ました。日本だけでなく、ヨーロッパでも大ヒットしています。劇中に登場する糸守町という架空の町は、飛騨古川(岐阜県飛騨市)などがモデルになったそうですが、南相馬にも通ずる「懐かしさ」を感じました。鑑賞後、思わず福島に戻りたくなってしまったほどです(笑)。

 南相馬から福島市内に向かってバスで移動すると、辺り一面の田畑と緑に囲まれた山々が目の前に広がります。その景色を眺めていると、「福島こそ日本の原風景にふさわしい。この美しい景色が失われることはあってはならない」と強く実感しました。

 ――一方で福島では現在、医療危機の問題に直面しています。昨年12月30日、福島第一原子力発電所からわずか22㎞に位置する高野病院の院長であり、かつ唯一の常勤医だった高野英男医師が、自宅の火災で亡くなりました。

 クレア 一報を耳にして、胸が痛くなりました。高野先生は、震災後も避難することなく診療を続け、双葉郡で唯一の病院を守りつづけました。118床の入院ベッドを抱え、広野町の住民や復興関係の作業員の診療を一人で担ってきたのです。

 高野先生がお亡くなりになり、高野病院は一時存続の危機に陥りましたが、1月に関しては福島県浜通り地区の医師が中心となって支援を行ない、何とか急場をしのぎました。また、2月以降についても、院長・常勤の医師が見つかったようです。

 一方で、入院ベッドの約半分を占める精神科の診療体制がまだ不十分なこともあり、支援団体「高野病院を支援する会」による呼び掛けが続いています。高野病院が存続することを切に願っています。

 

必要なのは、アクション

 ――クレアさんは以前、ネパールにも足を運んだことがあるそうですね。

 クレア ちょうどネパール大地震(2015年4月25日発生。ネパールおよび周辺国に8000人以上の死者を出し、甚大な被害をもたらした)が発生して間もない時期でした。被災の残滓が至る場所にあり、災害時のことを不安そうに話す人びとの姿が印象的でした。

 さらに、新興国のネパールでは、震災のために集めた募金を、政府が課税して高官が着服するといったことが平然と行なわれていました。これでは復興が進むどころか、国民の生きる気力を失わせてしまいます。本当に必要としている人の元に支援金や物資が届くシステムを構築すること、そして公正な政府を維持することは、日本と比較するまでもなく、とても大切だと実感しました。

 ――最後に、福島の復興のためにご自身が取り組めることは何だと思いますか?

 クレア 今後は、南相馬に来て自分の目で見てきたもの、調査してきたことを記事や論文にまとめて英語圏で出版し、微力ながら正確な情報・実態を全世界に伝えていくことが、自分の使命だと思っています。

 多くの人が震災復興を美談として語りますが、それでは不十分です。必要なのは、アクションです。東日本大震災から6年が経ちますが、被災地の復興にはまだまだ時間がかかります。復興の灯を絶やさぬためにも、一人ひとりが自分のできることを見つけ、地道に継続していくことが何より重要ではないでしょうか。

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