2011年06月01日 公開
2023年09月15日 更新
東日本大震災の被災地復興で、関西の2府5県から構成される関西広域連合が「カウンターパート方式」で、被災地に的確な支援を展開しています。その仕組みをみてみましょう。
関西広域連合は、府県域を越える防災や医療、産業振興などの広域行政課題に対応するために2010年12月に設立された特別地方公共団体です。
震災2日後の3月13日、関西広域連合は「東北地方太平洋沖地震支援対策にかかる関西広域連合からの緊急声明」を発表し、被災地支援に取り組んでいます。主な支援内容は警察・消防・医療の派遣、支援物資等の送付、応援要員の派遣、避難者の受け入れですが、それらを「カウンターパート方式」によって行うことを決めました。それは特に被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県に対し、それぞれ担当する府県を割り当てるものです。岩手県を大阪府と和歌山県が、宮城県を兵庫県と鳥取県と徳島県が、福島県を滋賀県と京都府が支援し、重複を避け成果をあげています。
この「カウンターパート方式」の参考とされたのは、2008年中国四川省の大地震の震災復興で導入され復興の大きな原動力となった「対口(たいこう)支援」です。特定の被災地区に特定の支援自治体を割り当てて支援させる取り組みで、四川復興においては、支援側は19の省と市、被支援側は被災地を20の地区に分けられ、財政力を勘案されたペアを組み3年を期限として支援が行われています。具体的には、援助側は、前年の財政収入の約1%の資金援助を3年間行うことに加え、必要な人材・資材、設備、経費を負担します。そして復興計画策定から復興支援事業まで、全ての分野において支援が行われました。
中国の「対口支援」と、関西広域連合の「カウンターパート方式」の違いは、中国政府が震災後約1ヶ月で、トップダウンで復興条例を作り、ペアリングを決めたのに対し、関西広域連合の場合には、関西府県による自主的な支援を関西広域連合が「マッチング」しているものといえるでしょう。東日本大震災から2ヶ月以上が経っていますが、国から支援自治体への財政措置が確かなものとなっておらず、全国から広く行われている自治体間支援は、未だに支援自治体の善意に基づくものに留まっているのです。
関西広域連合は、一対一の支援を充実強化するため、「東日本大震災に関する緊急提案(第2次)」で、政府に対して、特定の被災自治体と特定の自治体を組み合わせて復興支援を行う仕組みづくりを提言しています。また、被災市町村の負担軽減を狙い、災害復旧事業を他の自治体が代行できる制度の創設を提案しています。
災害復旧においては、避難所の運営や仮設住宅の建設など短期的かつ大きな行政需要を抱える被災自治体に対し、ノウハウを持った他の自治体が、積極的に支援していける仕組みを作ることが必要です。ただし、中国のように政府がトップダウンで支援・被支援の自治体ペアを決めるような方向は、地方分権の流れに逆行します。
将来的には、関西広域連合のような広域行政体が、平時より域内のいくつかの自治体の意向を調整して、被災自治体とマッチングする仕組みを作っておくことが有効ではないでしょうか。また、全国的な調整においても広域行政体同士が調整すれば、最適な自治体間マッチングを行うことができるでしょう。今後も起こりうる広域災害に対して、自治体間で長期的かつ継続的に支援できる体制を作ることが、求められています。
(2011年5月30日掲載。*無断転載禁止)
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更新:11月23日 00:05