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東京都知事は「オリンピック埋蔵金」を震災復興支援に活用せよ

2011年03月23日 公開
2024年12月16日 更新

宮下量久(政策シンクタンクPHP総研研究員)

 3月11日に発生した東北関東大震災は、戦後最大の災害になる公算が大きいと思われます。この地震が起きた当日、石原慎太郎東京都知事は4期目の就任を目指し、4月の統一地方選挙での出馬表明をしました。地震の影響で都内でも輪番停電が続く中、3月24日に公示される知事選で、どのようなポイントが議論されるべきでしょうか。

 前回3期目を目指した石原氏の選挙公約の中に、2016年夏季オリンピック招致がありました。しかし、2009年に失敗に終わっています。現時点で、オリンピック招致の継続について東京都の方針は明確ではありません。

 このため、オリンピック開催費用として積み上げた「東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金」(以下、「オリンピック基金」)は、1年以上も放置されたままになっています。その金額は利子収入等を含めて、2011年度末には4,153億円になる見込みです。

 このオリンピック基金を含めて、東京都の基金総額は2011年度末で9,635億円になります。東京都の来年度予算案では、税収不足を補うため財政調整基金など2,207億円を一般会計に繰り入れる予定ですが、それでも1兆円近い基金が残っているのです。東京都の予算編成の方針では、「将来にわたって積極的な施策展開を支え得る財政基盤を堅持する」と記されています。基金残高は一般会計予算額の約 15%にもなり、全国の都道府県の中でも東京都には大きな財政的余剰があるといえます。

 一方で、政府・民主党は災害復興財源を確保するのに苦心しています。岡田克也民主党幹事長は、平成23年度予算案において、高速道路の原則無料化や子ども手当ての上積み分を見直すことを明らかにしました。しかし、これらの政策を取り止めても、約 3,000億円の財源にしかなりません。今後、子ども手当てなどの廃止についても議論が必要になると考えられますが、与野党の合意形成に時間がかかるかもしれません。

 今後、震災復興には巨額の財源が必要になります。財政基盤が比較的安定している東京都は、オリンピック基金を「被災地復興支援金」として、被災地に提供することを検討してもよいかもしれません。

 ところが、オリンピック基金は、条例で使途が定められている特定目的基金です。このためオリンピック基金は、条例改正を行わない限り、オリンピック以外に使用することができません。つまり、オリンピック基金は、見通しのないオリンピックのためだけに東京都に埋蔵された、「オリンピック埋蔵金」ともいえるでしょう。

 震災の規模を考慮すれば、東京都知事選では都内の課題が議論されるだけでは不十分です。各候補者は「オリンピック埋蔵金」の有効な活用方法も含め、被災地支援策を都民に問う必要があります。都民も都知事選を被災地復興について考える機会とすべきでしょう。

(2011年3月22日掲載。*無断転載禁止)

 

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