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道州制基本法で何が決まるのか

2013年02月25日 公開
2023年09月15日 更新

荒田英知(政策シンクタンクPHP総研地域経営研究センター主席研究員)

 

 2月21日、自民党の道州制推進本部が、道州制基本法案を今国会に提出する方針を確認したと報じられた。経緯を知らなければ唐突に感じるかもしれない。しかし、はじめて道州制担当大臣を置いたのは第一次安倍内閣にほかならず、2008年には道州制ビジョン懇談会が中間報告をまとめていた。その後は基本法案の提出が焦点となったが、政権交代によって頓挫していた。

 野党時代にも自民党は検討を続けており、政権に返り咲いたいま、基本法がふたたび取りざたされるのは決して性急なことではない。安倍総理自身も1月31日の衆議院本会議で、基本法について「早期制定を目指して議論を行う与党と連携を深めて取り組む」と明言している。

 道州制基本法の主眼は、道州制についての定義や基本理念とともに、実現に至る工程を定めることにある。基本法で決まるのは、道州制実現のスケジュールであると言って良い。自民党が昨年9月にまとめた骨子案では、内閣に総理を本部長とする道州制推進本部を置くとともに、内閣府に道州制国民会議を置くこととしている。国民会議は総理の諮問にもとづき道州制に関する重要事項を調査審議し、3年以内に答申を行なう。政府は答申をもとに、2年をめどに必要な法制の整備を実施することとなっている。

 骨子案には、国民会議への諮問事項として次の12項目が掲げられている。

ア 道州の区割り、事務所の所在地その他道州の設置

イ 国、道州及び基礎自治体の事務分担

ウ 国の機構の再編並びに国の道州及び基礎自治体への関与の在り方

エ 国、道州及び基礎自治体の立法権限及びその相互関係

オ 道州及び基礎自治体の税制その他の財政制度並びに財政調整制度

カ 道州及び基礎自治体の公務員制度並びに道州制の導入に伴う公務員の身分の変更等

キ 道州及び基礎自治体の議会の在り方並びに長と議会の関係

ク 基礎自治体の名称、規模及び編成の在り方並びに基礎自治体における地域コミュニティ

ケ 道州及び基礎自治体の組織

コ 首都及び大都市の在り方

サ 道州制の導入に関する国の法制の整備

シ 都道府県の事務の道州及び基礎自治体への承継手続その他の道州制の導入に伴い検討が必要な事項

 検討事項は多岐にわたり、道州制が国・道州・基礎自治体それぞれが大きく様変わりして新しい国のかたちに移行する大改革であることがわかる。その全体像に一定のめどをつけるためには、国民会議には極めて精力的な活動が求められることになろう。

 道州制の目的は、行き過ぎた中央集権体制を改め、国と地方の役割を描き直すことにある。そうした観点からは、制度設計が国主導で進むことは好ましいとは言えない。検討の過程で、都道府県や市町村の地方自治体や経済団体などの声を十分に反映させていく必要がある。地域のさまざまな主体が連携して問題提起していくことも重要である。また、道州制に対する国民の理解を得ていく活動も欠かせない。

 参院選の結果次第では、基本法案が年内にも可決される可能性がある。道州制の中身を大きく左右することになる制度設計について、地方分権・地域主権改革の流れに沿って地方主導で進めるべきだと考えるなら、地方側は早急にその対策を練る必要がある。

 <研究員プロフィール:荒田英知☆外部リンク

 

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